トリプル・エクラン(読み)とりぷるえくらん

世界大百科事典(旧版)内のトリプル・エクランの言及

【ナポレオン】より

…《戦争と平和》(1919),《鉄路の白薔薇》(1923)に次いでアベル・ガンス監督がサイレント映画史に残した傑作として知られ,〈映画的効果の百科事典〉〈サイレント映画に可能なことのすべてを陳列して見せた絢爛豪華な大展覧会〉(ケビン・ブラウンロー評)とまでいわれるように,すばやく,たたきこむように短いカットをつないでスピード感を出す〈フラッシュ・カッティング〉や分割画面,あるいは軽量カメラを馬の背や振子にくくりつけての撮影等々,文字どおりあらゆる映画的技法が〈光の交響楽〉をつくりあげている。さらに3台のカメラで撮影した映像を3面のスクリーンに映写する〈ポリビジョン〉(または〈トリプル・エクラン(三面スクリーン)〉)と命名された映写方式がこの映画のためにガンス自身によって考案され,あるときは一つのイメージが三つの画面にひろがり,またあるときは三つのスクリーンに別々のイメージが映し出され,ラストのイタリア出撃のシーンをはじめ,いくつかのシーンで用いられて圧倒的なスペクタクル効果を上げた。 しかし,《ナポレオン》と同年にアメリカでは《ジャズ・シンガー》(1927)が公開され,それとともに映画はトーキー時代に突入し,大スクリーン方式への投資は顧みられず,そのため《ナポレオン》はほとんど完全な形で上映されることがなく(アメリカでは上映時間5時間のこの巨編が1時間20分に短縮され,スタンダード版に焼き直されて公開されただけであり,日本でも17.5ミリ版が公開されたにすぎなかった),興行的には惨敗した。…

※「トリプル・エクラン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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