ムーシナック,L.(読み)むーしなっく

世界大百科事典(旧版)内のムーシナック,L.の言及

【アバンギャルド】より

…すなわち,ルイ・デリュックが名づけた〈フォトジェニー〉という言葉が意味する〈映画美〉を表現するために,スロー・モーション,コマ落し,二重写し,フラッシュ・バック等々といった〈映画的〉テクニックが過剰に用いられ,〈アバンギャルド〉の芸術的手法として定着することになる。しかし,こうした徹底した芸術至上主義がやがて形式主義に陥る事実も否めず,たとえば当初,アバンギャルドの積極的な唱導者であった理論家レオン・ムーシナック(1890‐1962)は,ジガ・ベルトフ,エイゼンシテイン,プドフキンらのソビエト映画を発見して以後,絶対映画,抽象映画,純粋映画を,〈いわゆる前衛映画〉とし,それらは手前味噌の前衛,実験室の実験止りであり,少数の通やつくり手のみに役立つだけで映画の真の運命には相反したものであるという強烈な批判を浴びせるにいたるのである。
[反響と影響]
 アバンギャルド映画の多くは商業ルートに乗らない短編映画がほとんどで,国外では見られることがきわめて少なかった。…

【フォトジェニー】より

… かつて世界の市場を支配したフランス映画が,第1次世界大戦を機にハリウッド映画に圧倒されていた当時,フランスのもっとも先駆的な映画人の1人であったルイ・デリュックLouis Delluc(1890‐1924)は,映画の本質を〈フォトジェニー〉ということばであらわし,《フォトジェニー》(1920)と題する著書も出した。〈フォトジェニー〉は定義しがたい〈魔法のことば〉といわれたが,デリュックを師と仰いだ監督・理論家のジャン・エプスタンは,《エトナ山上の映画論》(1926)のなかで,〈絵画にとっての色彩,あるいは彫刻にとってのボリューム,すなわちその芸術の固有の要素〉とフォトジェニーを定義し,また映画批評家・理論家レオン・ムーシナックLéon Moussinac(1890‐1964)は,フォトジェニーの本質を〈視覚的リズム〉と定義した。デリュックの脚本によるジェルメーヌ・デュラック監督の《スペインの祭》(1919),デリュック脚本・監督の《狂熱》(1921),アベル・ガンス監督の《鉄路の白薔薇》(1923)などがフォトジェニーの美学を実現した代表的な作品に数えられる。…

【モンタージュ】より

…当時はまだそれを意味する特別なことばはなかったが,グリフィスはすでにモンタージュを発見していたということができる。しかし,モンタージュが理論化されるのは1920年代のフランスとソビエトにおいてであり,たとえばフランスの批評家レオン・ムーシナックLéon Moussinac(1890‐1964)は,映画を〈目で見るリズム〉と考え,映画を組み立てるということは映画にリズムをあたえることであるというモンタージュ論を展開した。アベル・ガンス監督の《鉄路の白薔薇》(1923)はその実験的な代表作とされる。…

※「ムーシナック,L.」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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