世界大百科事典(旧版)内の争点効の言及
【エストッペル】より
…また,〈正式記録を根拠とする禁反言estoppel by record〉は,裁判所または議会の正式記録の中で認定されている事実を否定することは許されないとする。なお,アメリカの訴訟法では〈コラタラル・エストッペルcollateral estoppel〉という言葉が用いられるが,これは日本で争点効とよばれる法理であり,裁判で当事者が争った法律問題について裁判所が明示的に下した判断は,その当事者の間では,それ以後の他の事件――したがって既判力は及ばない事件――においても,拘束力をもつものとして扱われるべきであるとする。 エストッペルは,元来は事実の表示に関するものであったが,アメリカでは,これを約束の表示にも広げ,例えば,寄付の約束がなされた後,相手方がこれを信頼してさまざまの行為をし,もはやその寄付の約束の撤回を認めると正義に反する結果が生ずる状態になったときは,この約束を法律上拘束力あるものとして扱うという法理が作られた。…
【既判力】より
…上例において,Bの買得の主張が正しいとして,A敗訴の判決が言い渡されたので,今度はAがBとの間の売買を前提としてその代金支払を訴求した場合,Bの買得の主張に対する判断に既判力が生じないだけに,Bは前言をひるがえしてAとの間にはもともと売買契約はなかったと主張することが可能となる。このような事態を避けるため,当事者間で主要な争点として争われ,裁判所も十分な審理・判断を遂げた場合には,その判断が理由の項で示されていても,既判力に類する拘束力(争点効という)を認めるべきだとする説がある。最高裁判所は,この争点効を認めないが,〈信義誠実の原則〉を用いて理由の項の判断にも拘束力を認めようとし,最近ではこれに同調する学説もふえている。…
※「争点効」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」