世界大百科事典(旧版)内の依他起性の言及
【唯識説】より
…この説の特徴は,従来の6種の識(眼,耳,鼻,舌,身,意の六識)のほかに,あらゆる表象としての存在を生み出す根本識として,そのメカニズムを担う種子を蔵しているアーラヤ識(阿頼耶識(あらやしき))と,根源的な自我執着意識である末那識(まなしき)との二つの深層心理を立てたことである。また,存在のあり方を認識主観とのかかわりによって遍計所執性(へんげしよしゆうしよう)(主客として実在視されたあり方),依他起性(えたきしよう)(縁起によって生じている相),円成実性(えんじようじつしよう)(主客の実在視をはなれた真実のすがた)の三つに分ける三性説,およびそれを否定的に表現した三無性説も唯識説独自の思想である。この唯識説を唱えた学派は瑜伽行唯識派とも呼ばれるように,この説は,ヨーガ(瑜伽(ゆが))という実践を通して,識のあり方を汚れた状態から清浄な状態へ変革すること,すなわち汚れた識を転じて清らかな智慧を得るという〈転識得智(てんじきとくち)〉を究極の目的とする。…
※「依他起性」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」