半ペラギウス主義(読み)はんぺらぎうすしゅぎ

世界大百科事典(旧版)内の半ペラギウス主義の言及

【恩寵】より

ペラギウスは原罪を否定し,人間は自力で神法を遵守しうるほどの完全な自律的自由を有すると主張して恩寵の必要性を軽視した。また半ペラギウス主義は,人間は自由意志によってみずからを恩寵を受けるにふさわしい状態に置きうると説く。このような立場はアウグスティヌスを先導とするキリスト教神学の展開のなかで退けられたが,16世紀以降,恩寵と人間的自由の関係をめぐって激しい論争が起こり,バニェスD.Báñez派が救いへと導く人間の自由な行為は恩寵によって有効に発動させられると説いたのに対して,モリナ派は人間的自由をより積極的に弁護する必要があるとして,神の摂理・預定と人間的自由の両立可能性を説明するための〈中間知〉の理論を提示した。…

【カッシアヌス】より

…主著《共住修道士の掟および八大悪徳の救済》12巻は,修道制の組織と霊的生活の方法を述べた指針として,ベネディクトゥス会則をはじめ西方の修道院規則の基礎となった。神学者としては人間の自由意志を神の恩寵に優先させる半ペラギウス主義の代表者であった。【森安 達也】。…

【ペラギウス】より

…しかも自力による救いの努力を〈信仰のみ〉と称したこともあったので(《ガラテヤ人への手紙講解》),論争は輻湊をきわめた。ペラギウスの弟子たちはさらに原罪,預定(選び),幼児洗礼を否定したが,彼らの死後この極端な主張をやわらげる形での半ペラギウス主義Semipelagianismが生じ,それはネストリウスに影響したほか中世のカトリック教会にも長く尾を引いた。宗教改革者とジャンセニストは,ペラギウス主義と半ペラギウス主義とを協働説あるいは救済の二重化とみなしてきびしくしりぞけた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」