世界大百科事典(旧版)内の南蛮趣味の言及
【エキゾティシズム】より
…本来は自国に見られない風土や風俗への漠然たる好奇心から始まったものと思われるが,芸術上の趣味,もしくは時代的風潮としては,それぞれ特定の地方への関心が強く情緒化されたものであり,場合によってはこれに,自国の環境から離脱したいとする現実逃避の気分が結びつく。たとえば日本の室町末期から安土桃山期にかけての南蛮趣味は,困難な貿易の相手国であり技術的先進性をもつ西欧諸国への素朴な現実的関心が,やがて西欧人の風俗への情緒的関心に転じ,さらにキリスト教の流入にともなって強烈なあこがれの色をも帯びるにいたったものと思われる。そのあこがれは,のちの鎖国や禁教などの圧迫によってかえって内攻し,やがて,遠く時代をへだてた大正期に,西欧の文物摂取による急速な近代化が一つの行詰りにさしかかったところへ,芥川竜之介,北原白秋,木下杢太郎らの耽美的な南蛮趣味を生み落としている。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」