世界大百科事典(旧版)内の受身的対象愛の言及
【甘え】より
…つまり自分とは別の存在である母親が自分に欠くべからざるものであることを感じて母親に密着することを求めることであり,〈人間存在に本来つきものの分離の事実を否定し,分離の痛みを止揚しようとすること〉である。外国で甘えの概念に相当するものはイギリスの精神分析学者M.バリントが〈受身的対象愛〉と表現しているもので,その背後にはいつも分離不安と葛藤が隠されていると推察している。臨床的には精神医学者森田正馬が神経質患者の主観的症状にとらわれるさまを過剰な注意集中による精神交互作用の結果であると説明しているが,甘え概念を用いて治療関係を分析すれば,そこには〈甘えたくとも甘えられない心が原動力として働いている〉ことに気づく。…
※「受身的対象愛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」