六訂版 家庭医学大全科 「四肢麻痺」の解説
四肢麻痺
ししまひ
Quadriplegia
(外傷)
どんな外傷か
四肢の運動麻痺があれば、脳または
検査と診断
①神経学的検査
まず呼吸や循環の状態をチェックしつつ神経学的な検査を行い、脊髄麻痺の高位(どの高さで麻痺が起こっているか)、麻痺の程度を診断します。すなわち意識レベル、瞳孔の大きさ、左右差、対光反射、
損なわれた脊髄以下の運動や知覚がわずかでも残っていたり、会陰部の知覚や肛括約筋の収縮が残っている場合には完全麻痺ではなく、不全麻痺である可能性があります。これはその患者さんの回復の予測や治療方針を決めるうえで重要なポイントです。たとえば、四肢麻痺でもわずかに足の指が動いたり、足に知覚が残っている場合は、不全麻痺の可能性が高いといえます。
②画像検査
頸椎の単純X線写真の撮影がまず基本です。
治療の方法
①全身管理
自律神経の異常による
また、胃や腸の動きが悪くなり、麻痺性イレウス(
②初期治療
前記の全身管理のほか、頸髄損傷に対しては頸椎損傷と同様にまず絶対安静を保つために、
また、脊髄麻痺に対してステロイド剤(ソル・コーテフなど)の緊急大量療法、濃グリセリン・果糖(グリセオール)の静脈注射などの薬物療法を行うこともありますが、その有効性については意見の分かれるところです。
③合併症と予後
頸髄損傷では、
④本人、家族への説明
突然の四肢麻痺に対する本人および家族の心理的動揺を考え、心理的援助も必要です。
自立した日常生活が難しいと判断された場合は、家族などの介助が必要であることを告知します。
朝妻 孝仁
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報