世界大百科事典(旧版)内の《夢と実存》の言及
【現存在分析】より
…その方法として用いられたのはまずフッサールの現象学,ついでハイデッガーの現存在分析論Daseinsanalytikで,現存在分析という名称もそこから由来している。 現存在分析の最初の道標と目されるのはビンスワンガーの《夢と実存》(1930)で,ここでは,フッサールの現象学的方法に拠りながらも,すでに〈世界内存在〉としての現存在というハイデッガー的把握に立って,人間存在に固有な〈上昇と落下〉の人間学的本質特徴を提示している。彼によれば,〈稲妻にうたれる〉とか〈天から落下する〉とか〈空高く飛翔する〉といった表現が古今の詩や文学や神話のなかにしばしば出てくるが,これらは単なる詩的比喩ではなく,人間の実存の最も深い根底から湧き上がってくるもので,それまで生を支えていた共同世界との調和が破れ,ゆらぐ瞬間に実存が挫折する姿そのものにほかならない。…
【ビンスワンガー】より
…20年代にはフッサールの哲学に近づき,病者を歴史的に展開する主体として現象学的にとらえようと努めた。さらにハイデッガーの影響下でその現存在分析論Daseinsanalytikに立脚した人間存在の解明を試み,《夢と実存》(1930)を発表して,〈上昇と落下〉の人間学的本質特徴を描き出す。これ以後30年代の努力を経て現存在分析の方法をしだいに確立し,40年代に入ると《精神分裂病》(1944‐53)や《失敗した現存在の三形式》(1949‐56)を相次いで発表して,ドイツ語圏を中心とした精神医学に広範な影響をあたえた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」