世界大百科事典(旧版)内の大乗小説の言及
【大菩薩峠】より
…登場人物も多岐にわたり,竜之助,兵馬のほか怪盗七兵衛,進歩派の駒井能登守,神尾主膳,間の山(あいのやま)のお玉ことお君,精悍無比な米友や小坊主弁信など特異な人物群像が多く,時代長編の一大巨峰として位置し,それ以後の大衆文学に深い影響を与えた。ニヒル剣士竜之助像の創造には作者なりの時代批判があり,善悪の彼岸に生きようとする意図もあったが,しだいに思想性,宗教性を加え,作者はこれを〈大乗小説〉と称した。作中でお玉がうたう〈間の山節〉は人の世の無常を示すと同時に全巻を貫くモティーフをも現しており〈上求菩提(じようぐぼだい)・下化衆生(げけしゆじよう)〉の具象化としても読める。…
※「大乗小説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」