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妊娠中絶禁止運動 にんしんちゅうぜつきんしうんどうanti‐abortion movement

知恵蔵の解説

妊娠中絶禁止運動

人種問題を始めとするリベラルな政策に反対し、伝統的価値擁護をうたう、キリスト教右派によって主導された、「受胎イコール生命の開始」の立場をとる人工中絶禁止運動。中絶を憲法上の権利と認めた1973年の最高裁判決(「ロー対ウエード」判決)を破棄し、中絶を禁止する憲法修正条項と、受胎を生命の始まりとするヘルムズ=ハイド法案の成立を目指す。キリスト教をベースとした保守層のモラルを代弁するスローガンとして、80年の大統領選前後から政治課題化。アボーショニズム(中絶権支持)派との間で、ベトナム戦争以来といわれる国論を二分する、宗教と倫理に根ざすがゆえにほとんど和解不可能な激しい論争が展開されてきた。中絶反対の先頭に立つのは生まれる権利を守る全国委員会(NRLC:National Right to Life Committee)、中絶権保護を唱える団体には全米女性機構(NOW:National Organization for Women)、妊娠中絶権擁護全国連盟(NARAL:National Abortion Right Action League)などがある。最高裁が合法化を維持しつつも、州政府による規制を認める判決を出したのを受けて、多くの州で、妊娠後期の中絶禁止や親への事前通知などが定められていった。クリントン政権は93年1月、人工妊娠中絶に関する連邦の制限措置を撤廃する大統領令を発令。これに対しブッシュ大統領は2001年1月、就任2日目にして、米国外で中絶を支援・推進する民間団体へは補助金を支給しない、との大統領令を出し、02年8月には、新生児には連邦法に拠るすべての権利が保障されるとする新生児権利保障法案に署名。中絶手術に携わった医師が殺人罪に問われる可能性に道を開いた。さらにブッシュ大統領は、03年11月、クリントン政権下では大統領拒否権行使によって不成立となっていた、「妊娠中絶の一部を禁じる連邦法」(妊娠中期・後期の育ちすぎた胎児の中絶を禁止する)に署名。04年4月には5年にわたって議会で論争の続いていた、胎児を人間と規定し、胎児への加害を犯罪として罰する連邦法であるUVV法案(出生前被害者法案)を成立させた。

(井上健 東京大学大学院総合文化研究科教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について | 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

妊娠中絶禁止運動
にんしんちゅうぜつきんしうんどう

ロー対ウェード裁判」のページをご覧ください。

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