六訂版 家庭医学大全科 「尋常性痤瘡」の解説
尋常性痤瘡(にきび)
じんじょうせいざそう(にきび)
Acne vulgaris (Acne)
(皮膚の病気)
どんな病気か
思春期に発症し、12~18歳に悪化しやすいことから“青春のシンボル”などといわれて病気扱いされないことがありますが、ホルモンの影響を受けて
原因は何か
思春期における性ホルモンの変動、とくに男性ホルモンであるアンドロゲンの作用(女性でも副腎で産生される)により皮脂腺の分泌が多くなります。皮脂は毛嚢をへて外へ排泄されますが、遊離脂肪酸の刺激により毛嚢の出口に角質増殖が起こると、毛穴がふさがって皮脂がたまり、
悪化因子としては女性では月経前、ファンデーションなどの毛穴を詰める化粧品、男女とも睡眠不足、精神的ストレス、間食、気になって
症状の現れ方
日本における尋常性痤瘡の平均発症年齢は13.3±1.9歳で、男女差はありません。軽い症状も含めると、成人の90%以上がこの病気を経験しています。初発部位は前額が最も多く、年齢とともに頬、下顎に多くなってきます。
発疹は白色面皰または黒色面皰に始まり、赤い
検査と診断
特別な検査はありません。前述のような発疹の特徴から診断されます。
治療の方法
皮脂を洗い流して毛穴が詰まるのを防ぐために、十分な洗顔が重要です。次に、できた面皰は圧出器などを用いて内容を押し出すことで炎症の悪化を防ぎます。
2008年から日本でもビタミンA誘導体であるアダパレン(ディフェリンゲル)が使用できるようになりました。アダパレンは毛穴の角化を抑えて毛穴を開かせるので、痤瘡の初発疹である面皰を減らし、赤い丘疹など炎症を起こした発疹にも有効で、痤瘡治療の中心になる外用薬です。12歳以上で使えますが、妊婦さんや妊娠している可能性がある方は使用できません。
一部の施設では毛穴の角質を溶かして皮脂がたまるのを防ぐために、グリコール酸などを用いたケミカルピーリングが行われていますが、アダパレンの登場によりその必要性は低下しました。
痤瘡桿菌を抑える抗菌外用薬としては、ナジフロキサシン(アクアチムクリームあるいはローション)やリン酸クリンダマイシン(ダラシンTゲル)があります。これらのスキンケアや外用治療だけでは十分な効果が得られない場合は、ミノサイクリン(ミノマイシン)などのテトラサイクリン系やロキシスロマイシン(ルリッド)などのマクロライド系抗菌薬の内服が行われます。最近ではアダパレンと抗菌薬の内服または外用を組み合わせた治療法が一般的です。
病気に気づいたらどうする
洗顔などのスキンケアで軽快しない場合は、皮膚科専門医を受診してください。また、原因で述べた
末木 博彦
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報