世界大百科事典(旧版)内の山上他界観の言及
【照葉樹林文化】より
…ヒマラヤの南麓から東南アジア北部山地,雲南山地,華南や江南の山地をへて西日本に至る常緑広葉樹林帯は,カシ,シイ,クスノキ,ツバキなどの,樹葉の表面が光っている照葉樹で構成されているため,照葉樹林帯と呼ばれる。この地帯には多くの民族が住んでいるが,その生活文化の中には数多くの共通の文化要素がある。この照葉樹林帯に共通する文化要素によって特色づけられる文化を〈照葉樹林文化〉と呼ぶ。 この文化概念をはじめて提唱した中尾佐助によると,ワラビやクズ,あるいはカシ,トチなどの堅果類を水さらしによりあく抜きする技法,茶の葉を加工して飲用する慣行,繭から糸をひいて絹をつくり,ウルシやその近縁種の樹液を用いて漆器をつくる方法,かんきつとシソ類の栽培と利用,こうじを用いて酒を醸造することなどが,共通の文化要素のおもなものとしてあげられた。…
【他界】より
…仏教やキリスト教のような組織宗教の場合には,こうして呈示される他界のイメージは,天国や極楽にしても地獄にしても,一応の一貫性をもっているが,組織化の進んでいない宗教や民間信仰の場合は,互いに矛盾するいくつものイメージが共存していることが多い。たとえば日本の民俗宗教においては,山岳の頂きを他界の在所とする山上他界観や,海の彼方に他界があると考える海上他界観,あるいは洞窟などを他界の入口とみなすような地中(地下)他界観が併存している。これらの異なるイメージの存在は,地域差あるいは伝承の由来の違いによる差異というよりも,むしろ互いに矛盾しつつも多くの具体的なイメージを重ねることによって他界そのもの,死後の生そのものの実在性を例証する効果をもたらしているのだと言えよう。…
※「山上他界観」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」