世界大百科事典(旧版)内の後戸の神の言及
【後戸】より
…例えば東大寺法華堂の執金剛神,二月堂の小観音(こかんのん),常行堂の摩多羅神(まだらしん)などがその典型。法会儀礼のなかで後戸の神をまつる呪法は芸能化し〈後戸の猿楽〉という呼称が示すように中世芸能誕生の舞台となった。能楽の翁を後戸の神(宿神・守宮神)といい修正会(しゆしようえ)などの延年に登場するが,古来,修正会に後戸から鬼が出現するのもまた普遍的であり,ともに後戸の宗教性を象徴している。…
【宿神】より
…中世の《享禄三年二月奥書能伝書》によると,宿神は台密系の大寺院に祭祀する仏法守護神たる摩多羅神(まだらじん)であると明記してある。世阿弥の《風姿花伝》に載せる猿楽起源説話にいう〈後戸(うしろど)の神〉が,実態は摩多羅神であり,初期の呪師(しゆし)猿楽のわざはこの神に対する〈神いさめ〉であったことと関係がある。猿楽民の宿神信仰は,呪術宗教性を未分化なものとしていた中世以前の芸能の根源的な性格を象徴するもので,宿神はすなわち芸能神であったといってもよい。…
※「後戸の神」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」