世界大百科事典(旧版)内の悲劇論の言及
【詩学】より
…【編集部】
[アリストテレス詩学の伝統]
今日,一つの著作として伝わるアリストテレスの《詩学》(原題はperi poiētikēs(詩について))は,当時アリストテレスがギリシア悲劇(具体的には《オイディプス王》など)やギリシア叙事詩(具体的には《イーリアス》《オデュッセイア》など)を念頭において,一種の文学論あるいは創作論を学徒らに講義していたものが,その講義の覚書,あるいは聴講者の筆注が残り,26章からなる一つの著作物となったものといわれる。内容的には,芸術の起源は人間の模倣本能だとするミメーシスの説や,有名なカタルシス(浄化)の論なども含まれる悲劇論,叙事詩論などであるが,なかでもその中心は悲劇論であった。このように《詩学》は,その扱う対象が韻文(劇詩と詩)に限られていたが,〈小説〉という文学ジャンルが成立していなかった時代ゆえ,それは言いかえれば当時の〈文学〉の全領域を扱っていたということもできる。…
※「悲劇論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」