世界大百科事典(旧版)内の本州製紙江戸川工場事件の言及
【紙・パルプ工業】より
…すなわち,(1)はヤードをネットで囲い散水する,(2)は装置の適正な稼働,(3)は排ガスの焼却処理,(4)は廃液からの薬品回収と濃縮焼却処理,(5)は各種の分離技術の利用,(6)は一般的な大気汚染防止技術の採用により,ほぼ防止できる。 紙・パルプ工業による公害事件には,古くは1900年前後からの三菱製紙高砂工場によるものがあり,第2次大戦後では水質汚濁防止法制定のきっかけとなった58年の本州製紙江戸川工場事件(廃水による汚染で漁民が工場に乱入,警官と衝突)が有名であるが,事実上はすべての紙・パルプ工場がなんらかの事件を発生させてきた。また,紙・パルプ工業は原料輸送と用水の面で集中立地する傾向があり,静岡県富士市地区,愛媛県伊予三島・川之江地区などではこれにより被害はいっそう深刻となり,70年前後には一大社会問題となった。…
【水汚染】より
…ごく最近まで北アメリカやオーストラリアでも下水が海中放流されていたのは事実だが,この方式は内湾や内海の多い日本ではすぐにゆきづまった。1958年本州製紙江戸川工場の廃水による漁業被害が漁民の工場乱入事件(本州製紙江戸川工場事件)を起こし,これを機に初めて〈公共用水域の水質の保全に関する法律(通称水質保全法)〉〈工場排水等の規制に関する法律(工場排水規制法)〉のいわゆる水質2法が制定されたが,この法体系も経済安定本部の勧告にもとづいて汚染対策と産業発展の調和を保つことに基本がおかれ,同様に鉱害についても鉱山保安法の枠内で,必要上やむなく規制を行ったものといえる。このため,これら法的整備にもかかわらず汚染防止の効果はあまりあがらず,この2法による規制では不十分との指摘が強まり,70年,これらを発展的に解消したものとして水質汚濁防止法が制定された。…
※「本州製紙江戸川工場事件」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」