世界大百科事典(旧版)内の焙焼酒の言及
【酒】より
…また食習慣も酒造法に影響を与え,小麦の伝来とともに粉食の技術を知った前漢末以降の中国では,生の穀粉を練り固めてカビを生やした餅こうじを使った酒造法が主流をなし,粒食をする日本では蒸した米にカビをつけた撒麴(ばらこうじ)で酒がつくられている。このような麦芽やこうじによる穀物酒の発生にいたる進化の中間段階に存在する酒として,焙焼酒(ばいしようしゆ)と口嚼酒(くちかみのさけ)がある。いずれも穀物などデンプンを含むものを原料とし,前者はこれを焼いてデンプンを熱分解し,後者は唾液の作用でデンプンを糖化し,自然発酵させてつくる。…
【醸造】より
… 技術的にみると,原料をそのまま,あるいは圧砕,ろ過して貯蔵するだけで自然に発酵がはじまるブドウ酒などの果実酒,ヤシ酒などの樹液酒,馬乳酒などの乳酒は,発酵中腐ることがなければ,古代人にとって容易につくることのできる酒であったと思われる。穀物や根栽作物などのデンプン質を原料とする酒は,デンプンを糖に変える発酵のほかに糖化工程を必要とし,その原始的なものはデンプンを加熱によって分解し発酵させる焙焼(ばいしよう)酒と,唾液の酵素力で糖化する口嚼酒があり,さらに麦芽などの発芽穀類やカビを生やした麴の酵素力を利用した高度の醸造へと進化していったものであろう。一方,醸造の成否は有用微生物をいかに自然界から取りこみ,腐敗の原因となる有害微生物の侵入をいかに防ぐかにかかっており,微生物の存在すら知らなかった時代の醸造は失敗を繰り返しながら長い年月をかけて,有用微生物の自然純粋培養法を経験的に確立したものといえよう。…
※「焙焼酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」