無酸素発作

六訂版 家庭医学大全科 「無酸素発作」の解説

無酸素発作
(子どもの病気)

 この発作は、生後2カ月~3歳くらいまでにみられ、大きな心室中隔欠損症(しんしつちゅうかくけっそんしょう)肺動脈弁下狭窄(はいどうみゃくべんかきょうさく)を併せもつチアノーゼ型の先天性心臓病に起こります。ファロー四微症が代表的ですが、両大血管右室起始症(りょうだいけっかんうしつきししょう)単心室(たんしんしつ)三尖弁(さんせんべん)閉鎖症などにもみられます。

 症状は、睡眠後の不機嫌、号泣、排便などをきっかけにチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)が増強し、呼吸が速くなり、ぐったりしてきます。進行すると意識がなくなったり、けいれんを起こすことがあります。また、発作は午前中に多く、脱水感染による発熱貧血などは症状を助長します。

 発作の機序(仕組み)は、前記の状況をきっかけに心臓を収縮させるホルモンが多量に分泌されて右心室の出口の筋肉を過収縮させるため、右心室から肺動脈への静脈血酸素が少ない血液)が減り、その分、心室中隔欠損を通って大動脈へ流れるために起こります。

 この発作は、悪循環に陥ると命に関わるので、発作の初期に治療することが重要です。もし自宅で発作を起こしたら体を折りたたむように膝を胸につける体位膝胸位(しっきょうい))で抱きかかえます。これによって右心室から大動脈へ流れる動脈血流を減らし、チアノーゼを改善することができます。酸素吸入も効果的です。

 しかし、これらの処置でチアノーゼが改善しない場合は、至急医療機関を受診してください。また、発作予防にβ(ベータ)ブロッカー(インデラル)を内服する場合もあります。加えて、便秘や貧血などは日ごろから予防し、感染などによる発熱や下痢などの際には水分を十分に補給することも必要です。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

世界大百科事典(旧版)内の無酸素発作の言及

【ファロー四徴症】より

…運動している途中で急にしゃがみ込み,しばらくしてまた立ち上がって運動を続ける症状が特徴的で,このしゃがみこんだ姿勢を蹲踞(そんきよ)という。乳幼児期には,無酸素発作といって,眠りから覚めたときなどに,啼泣,哺乳,排便などがきっかけになって,チアノーゼが増強し,呼吸が苦しくなり,ぐったりする発作を起こすことがある。発作は数分から数時間も続き,重い発作の場合には,意識消失,痙攣(けいれん)をきたし,ときに死に至ることもある。…

※「無酸素発作」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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