世界大百科事典(旧版)内の《牛乳屋テビエ》の言及
【イディッシュ文学】より
… 近代のイディッシュ文学の基礎を築いたのは,記述言語としての基本文型を確立したメンデレ・モヘル・スフォリムMendele Mocher‐Sforim(1835‐1917)であり,続くシャローム・アライヘム(1859‐1916),イサク・レイブ・ペレツIsaac Leib Peretz(1852‐1915)の精力的な創作活動を通じて着実な開花,発展を見ることになった。メンデレは《不具者フィシュケ》(1888),《ベンジャミン3世の放浪》(1878)で貧困にあえぐ男や夢想に取り憑かれた男の遍歴譚を描き,ユダヤ社会にわだかまる観念主義や偏見を風刺し,シャローム・アライヘムは《イディッシュ人民文庫》(1888‐89)発行によってユダヤ文学興隆に貢献するとともに,《メナヘム・メンドル》(1892),《牛乳屋テビエ》(1894)など,連作の諸短編でロシア圧政下の小村落に住むユダヤ庶民の姿をユーモアと哀感のあふれる文章で活写し,多数の読者を獲得した。ペレツはハシディズム信奉の強固な伝統主義と新しく勃興した近代進歩思想の相克するはざまに立って,神秘性・宗教性を帯びた多くの民話や短編,さらに戯曲《黄金の鎖》(1911),《古き市場の夜》(1914)で,ユダヤ民族に課された複雑な状況に対し鋭利な内省的検討を加えた。…
【シャローム・アライヘム】より
…ロシアのウクライナ地方に生まれ,ニューヨークで死去した。東ヨーロッパのユダヤの民衆生活を,ユーモアと風刺で描く物語の名手で,その成功作シリーズ《牛乳屋テビエ》は62ヵ国語に翻訳され,これをミュージカル化した《屋根の上のバイオリン弾き》(1964)はニューヨークでロングランの大当りをとり,映画化もされた。日本では森繁久弥が主役を演じ,好評を博した。…
※「《牛乳屋テビエ》」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」