犯罪大通り(読み)はんざいおおどおり

世界大百科事典(旧版)内の犯罪大通りの言及

【天井桟敷の人々】より

…《おかしなドラマ》(1937),《霧の波止場》(1938),《日は昇る》(1939),《悪魔が夜来る》(1942)に次ぐジャック・プレベール脚本,マルセル・カルネ監督のコンビの代表作かつ最高傑作であり(このコンビの作品によって代表される当時のフランス映画が〈詩的リアリズム〉の名で呼ばれた),おそらく世界中でもっともよく知られたフランス映画の名作である。 第1部〈犯罪大通り〉,第2部〈白い男〉という2部構成で,1840年代のパリのブールバール・デュ・タンプル(〈犯罪大通り〉の名で呼ばれた)を主要な舞台に,パントマイムを舞台芸術にまで高めた偉大な創始者として知られるJ.G.ドビュロー,ロマン派演劇の名優F.ルメートル,悪名高き犯罪詩人ピエール・フランソア・ラスネールといった実在の人物が,娼婦ガランスやドビュローが活躍したフュナンビュール座の座長の娘ナタリーといった虚構の人物と入りまじって,まさに虚々実々の恋愛絵巻をくりひろげる波乱万丈の物語である。ガランスにアルレッティ,ドビュローにジャン・ルイ・バロー,ルメートルにピェール・ブラッスール,ラスネールにマルセル・エラン,座長の娘ナタリーにマリア・カザレスという完ぺきな配役と,彼らを取り巻く俳優陣(伯爵を演ずるルイ・サルー,〈乞食〉のガストン・モド,下宿屋のおかみジャーヌ・マルカン等々)のみごとな演技もあって,フランス映画の不朽の名作となっている。…

【フランス演劇】より

…しかしその後にできた現在のグラン・ブールバールが,中心を西に移しつつも劇場街として隆盛をみるという劇場地図は,20世紀の前半までほとんど変わらなかった。
【19世紀】

[ロマン派演劇と同時代風俗劇]
 タンプル大通りが〈犯罪大通り〉と呼ばれたのは,そこで流行した〈メロドラム〉(メロドラマ)という勧善懲悪お涙頂戴のサスペンス劇で無闇と殺人が行われたからであるが,G.deピクセレクールを代表とするこの大衆演劇は,1830年代から40年代にかけてのロマン派による文学戯曲変革の演劇的下地を作る。ユゴーによるロマン派演劇宣言《クロムウェルの序文》(1827),コメディ・フランセーズにおけるユゴー《エルナニ》初演(1830)の際の騒動(いわゆる〈《エルナニ》の戦い〉)から《城主》の失敗(1840)までの10年間を中心にするロマン派の詩人や作家の劇作は,〈犯罪大通り〉の繁栄とともに19世紀フランス演劇の第一の大きな時期を構成するが,しかしそこにはすでに,文学史と演劇史との〈ずれゆき〉をかいま見せている。…

【メロドラマ】より

…古典劇のほとんどでは,題名が劇中の主人公を表し,場所は一つに限定されているのに対して,メロドラマでは地方色を表すさまざまな装置の変化が特徴的である。こうして19世紀初頭,代表的なメロドラマ作者ギルベール・ド・ピクセレクールが現れるに及んで,メロドラマは,パリのタンプル大通りに密集する劇場で全盛を極め,以下に述べるようなその演目の内容から,タンプル大通りには〈犯罪大通りBoulevard du Crime〉という別名も生まれた。 メロドラマの内容としては,当時流行したゴシック・ロマンス怪奇小説の影響が大きい(フランスではこれらの小説は〈ロマン・ノアール〉(暗黒小説)と呼ばれた)。…

※「犯罪大通り」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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