世界大百科事典(旧版)内の生理学的唯物論の言及
【生命】より
…19世紀後半になって生理学および生化学の研究は急速に進み,生命現象の物理化学的解明の成果は累積し,世紀末には生理学的実験的方法を生物学の広範な分野に適用する実験生物学の成立がうながされた。哲学的には,思想も脳の分泌物であるという観念であらわされる生理学的唯物論が,K.フォークト,J.モーレスコット,L.ビュヒナーらによって唱えられた。他方,デュ・ボア・レーモンは,機械論的見解を推し進めつつも宇宙の究極には不可知の問題が残るとして,素朴な唯物論的理解を批判した。…
【俗流唯物論】より
…この立場は一種の科学主義的唯物論であり,広義には機械論的唯物論に属するが,18世紀のフランス唯物論がもっぱら物理学的な知見に立脚したのに対して,生理学的な知見に定位し,さらにはダーウィン流の進化論と結合したところに特質がある。このため,生理学的唯物論と呼ばれることもある。なお,この立場を特徴づける標語として〈膀胱が尿を分泌するごとく,脳髄が思想を分泌する〉という言葉が流布されているが,これはフォークトの命題を歪曲したものであって,彼ら自身は〈分泌する〉とまでは言っていない。…
※「生理学的唯物論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」