世界大百科事典(旧版)内の産業平和策の言及
【社会政策】より
… 日本では,1890年代に金井延などによって新歴史学派の社会政策論が導入され,96年に社会政策学会の創立をみたが,大恐慌によって資本主義各国で社会政策が危機に陥った1930年代に社会政策に関する新たな理解が展開されることとなった。その代表的な理論家である大河内一男(1905‐84)によれば,近代の社会政策は,土地から切り離された貧民の浮浪化の抑止と労役場制度を中心とする労働者の育成策など資本主義の生成期にとられた労働力創出のための政策を前提とし,(1)幼少年・婦人などの過度労働を防止するための工場法,疾病・失業などの生活上の事故に対する保障としての社会保険など,労働力の継続的再生産を維持するための労働力保全策,(2)労働運動の勃興にともない,これを資本主義体制のうちに包摂していくために展開されてくる労働組合の法的承認と統制を中心とする産業平和策,の二つの類型をもっている。しかも,工場法・社会保険などによる労働者保護の展開をまってはじめて労働者の社会的自覚も進展しうるという意味で,労働力保全策は産業平和策の歴史的,論理的な先行物として位置づけられたのである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」