世界大百科事典(旧版)内の神即自然の言及
【スピノザ】より
…彼は実体を自己原因としてとらえ,デカルトにはじまるアリストテレス的実体概念の革命を徹底し,無限に多くの属性から成る唯一の実体を神と呼んだ。いっさいの事物は様態すなわち神の変状であり,神はいっさいの事物の内在的原因であり,いっさいの事物は神の必然性によって決定されているとして,〈神即自然〉の汎神論的体系を展開し,思惟と延長を神の二つの属性,すなわち同一実体の本質の二つの表現と見て,心身平行論の立場をとり,デカルトの二元論をのりこえた。こうして彼は,自己の個体本質と神との必然的連関を十全に認識するとき,有限な人間は神の無限にあずかり,人間精神は完全な能動に達して自由を実現し,そこに最高善が成立すると説いた。…
【汎神論】より
…近世をつうじて,汎神論はキリスト教の正統から変装した無神論として非難され,スピノザを極悪の無神論者と見る見解が支配的であった。 1785年,F.H.ヤコビとM.メンデルスゾーンとの間でG.E.レッシングがスピノザ主義者であったか否かについて論争がはじまり,カント哲学の評価ともからんでドイツの知識人の非常な関心をひき,ヘルダー,ゲーテ,カントをもまきこみ,〈神即自然〉というスピノザ思想の再評価をめぐる大論争に発展し,その過程でスピノザの名誉回復がおこなわれ,ゲーテやヘルダーは彼の影響のもとに汎神論的思想を形成した。これを汎神論論争という。…
※「神即自然」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」