世界大百科事典(旧版)内の《経済原論》の言及
【宇野弘蔵】より
…58‐68年法政大社会学部教授。主要な業績は,経済学の研究を原理論,段階論,現状分析の3分野に分けるいわゆる3段階論の提唱(《経済学方法論》1960,など),《資本論》の原理論としての再構成(《経済原論》上・下,1950‐52,など),蓄積様式の世界史的3類型の確定(《経済政策論》1954)などである。〈宇野理論〉は戦後マルクス経済学の最大の成果の一つであるが,正統的マルクス研究からは異端視される。…
【マルクス経済学】より
… 宇野は,戦前の日本資本主義論争を労農派に近い立場から両派を批判的に考察しつつ,日本社会に残存する封建的ないし非資本主義的諸関係は,資本の運動自身が必然的に生みだしているのではないか,すなわち資本主義が一定の段階に達すると,その運動様式は《資本論》に示された運動法則と異なってくる必然性があるのではないか,と考え,《資本論》と後進国における資本主義化との論理的関連を体系的に組み立てるよう追究した。その成果が《経済原論》(上下。1950,52),《経済政策論》(1954),《経済学方法論》(1962)等であった。…
【労働価値説】より
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【日本における労働価値説の新展開】
ところで欧米においてはイギリスのウィクスティードPhilip Henry Wicksteed(1844‐1927)の《資本論――ある批判》(1884)やベーム・バウェルクの前掲のマルクス批判などによって,奇妙にも労働価値説やマルクス経済学研究への関心をほとんど失ってしまったが,第2次大戦前・戦中の激しい弾圧にもかかわらずマルクス経済学への関心と研究への意欲を絶やすことのなかった日本においては,戦後,新しい方法の提示によって労働価値説の研究に新たな展開がみられた。宇野弘蔵(1897‐1977)はその《経済原論》(上巻1950,下巻1952)において,商品,貨幣,資本などの流通形態とその展開を流通論として説き,資本の生産,流通,再生産の問題を扱う生産論と区別した。そしてマルクスがもっぱら行ったように,商品論で個々の商品の交換関係のなかで労働価値説を論証するのでなく,マルクスが他方である程度示唆していたように,資本の生産過程において,労働力の再生産に必要な生活資料は必ず確保されなければならないという事実のもとに,労働力に支払われる賃金による生活資料の買戻しを通して生産に要する労働時間を基準にして生活資料が,そして生活手段が相互に交換されるということが,論証された。…
【天野為之】より
…1882年東大文学部卒業後,立憲改進党に入党,同時に東京専門学校(早稲田大学の前身)講師に就任,高田早苗,坪内雄蔵(逍遥)とならんで早稲田三尊と後世称せられ,また操觚(そうこ)界(ジャーナリズム)にも活躍した。東京専門学校での講義は86年刊行の《経済原論》に結実したが,本書は10年間に21版を重ねるほどの好評を博し,イギリス古典学派経済理論の日本への紹介に貢献したので,福沢諭吉,田口卯吉とともに明治の三大経済学者と称せられている。出生年を1859年(安政6)に訂正して,90年の第1回総選挙に被選挙権を獲得,当選後予算委員として活躍したが,92年第2回立候補の際,暴行を受けたのみならず落選,政界を断念した。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」