《肘後方》(読み)ちゅうごほう

世界大百科事典(旧版)内の《肘後方》の言及

【医療】より

… 中国の医療の大部分は民間の医者によって支えられたと考えられ,多くの著名な医者が知られているが,医療を職業とした人たちのほかに,文化人たちが近親者の不時の用に備えるなどの目的で医書を研究したのが中国の医学の特徴の一つで,これは医療,とくに医学思想の向上に大きく役立った。しかし《肘後方》のような簡単な処方だけを集めた処方集が繰り返して編纂されていることは,地方の一般庶民階級を対象とした医療は,このような教養のある階級の出身である医者にかかることも薬品を手に入れることも困難であるという低い水準にあったことを示している。中国ではたびたび伝染病に悩まされたが,人痘(ヒトの天然痘のかさぶたを接種する方法)のような例外は別にして,一般にその療法は発達しなかった。…

【天然痘】より

種痘【南谷 幹夫】
【疾病史】
 天然痘すなわち痘瘡の発源地については諸説あるが,いちばん有力なのはインドとされており,それが古代民族の移動交流にともなって世界各地に伝播していった。中国には前1200‐前1100年ころに流入したともいわれるが,中国の医書《肘後方(ちゆうごほう)》によると,南斉の建武年間(5世紀末)に〈虜瘡(りよそう)〉と呼ばれる疫病が流行したとあり,これが痘瘡と特定できる最初の記録といわれる。おそらく,インドから仏教が伝播していった経路とほぼ同じ道,つまりシルクロードをたどって中国に入ってきたと思われる。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」