世界大百科事典(旧版)内の自然魔術の言及
【アグリッパ[ネッテスハイムの]】より
…神は彼にとって信仰の対象ではなく,認識の対象だったのである。自然を通して神性を認識することを,彼は〈自然魔術〉と呼んだ。この書がルネサンス期の人々に天上世界ではなく,地上の自然世界に目を向けさせる機縁となった。…
【汎知学】より
…それはまたそのアナロジカルな推論によって本来中世のものである。だが自然魔術(マギア・ナトゥラリスmagia naturalis)が夢想家や探究家の心を魅していた当時のような時代にあっては,このような思想が学問的著作のうちにも忍び込んでくる。イタリア人たちがこれを活用する。…
【魔術】より
…またキリスト教にいう悪魔と関係をもつ魔術を黒(くろ)魔術black magic,天使や善き精霊の力を借りる術を白魔術white magicとして区別した。しかしF.ベーコンなどにより〈真正の魔術〉と呼ばれた自然魔術natural magicは,霊魂ではなく医薬や磁力や言語の表象機能を魔力の源泉とするもので,ルネサンス期の魔術観の中核を占めた。これらは,対象と手段とに応じて占星術や錬金術,カバラの術などに細分され,近代科学の有力な一源泉になる一方,星や太陽の影響力を正しく測定し人間の未来を予言する万物照応の術,すなわち手相,人相,骨相などを含む観相術をも発展させた。…
【ポルタ】より
…そして1570年代の後半には,近代最初の科学アカデミーともいわれる〈自然の秘密アカデミア〉をナポリに設立して,その研究に没頭した。彼は《人相学》(1586)から《屈折光学論》(1593)にいたるさまざまな著作を著すとともに,戯曲作家としても健筆をふるったが,その主著とみなされるのは,20巻から成る《自然魔術》(1589)である。これは,錬金術,光学,磁気,薬物の効能などに関する多数のもの珍しい実験や現象を雑然と寄せ集めた大著で,時代の趣向にかなったために,ヨーロッパ各国で翻訳され,ひろく読まれた。…
※「自然魔術」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」