世界大百科事典(旧版)内の荘務権の言及
【本所】より
…《式目抄》に〈本所トハ領家也,元来ノ領主ヲ云也〉と規定されているように,荘園領主層のうち領家が本所の権能をもつことが多かった。古くは本所と本家を同義に理解し,11世紀後半以降在地領主層から私領等の寄進をうけた貴族層が,所領を維持するために権威を募り,より上位の貴族層に寄進して本家=本所と仰ぎ名目上の上級領主としたと理解されてきたが,研究の進展により,寄進主体である在地領主層と比べて,荘園領主が無力で名目的な領主であるとは一概にいえないことなどから,名目的領主としての性格が強い本家と区別して,実際に荘園支配の権限=荘務権を有する領家を本所と呼んでいる。もちろん,《沙汰未練書》に〈本家トハ本領主御事也〉という規定もあるように,本家と本所がほぼ同様な意味合いで使われていることをすべて否定するものではない。…
【領家】より
…それは,寄進をうけた荘園領主の領主権は,立荘以前の国衙の支配権を継承するものであり,寄進主体である在地領主層の私領に対する私的な領主権とは大きく異なった権限である。その権限は荘務権といい,発生史的には公領(国衙領)に対する国衙の支配権=国務を継承したもので,検田権,勧農権,検断権から構成されていた。このような荘務権をもち,現実に荘園の支配にあたった領家を〈本所〉という。…
※「荘務権」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」