世界大百科事典(旧版)内の虚実皮膜論の言及
【虚実】より
…〈虚〉を実体のないもの,うそ,偽り,〈実〉を実体のあるもの,まこととみる一般的な考え方と,〈虚〉は超越的な存在根拠であり,〈実〉はその具体的な現れであるという《荘子》風の考え方とがある。中国では古く《荘子》関係の思想書にこの言葉が見られ,以後詩文,書画,医学,兵学等の分野でもしばしば用いられた。 日本では主として近世の俳諧や演劇の方面で用いられ,その芸術観,文学本質論,表現論等を記述する場合の重要概念となっている。…
【難波土産】より
…〈芸といふものは実と虚(うそ)との皮膜(ひにく)の間にあるもの也。……虚にして虚にあらず,実にして実にあらず,この間に慰が有たもの也〉という〈虚実皮膜論〉で名高いこの聞書は,魂のない人形に魂を吹き込むには,文句に情をこめることが大切で,個々の人物にふさわしい言葉を用い,人物の実情・底意を表すためのデフォルマシヨンを行い,また,浄瑠璃の眼目である愁いの表現には,説明的な描写を排して,〈芸のりくぎが義理につまりてあはれ〉,つまり,劇の展開に内的な必然性を持たせるべきだと説いている。【今尾 哲也】。…
※「虚実皮膜論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」