…一方,ウェルズはT.モア以来のユートピア小説の伝統を受け,戦争や労働問題と近代科学の間にある危険を感じながら,良識と技能の有効な利用によって理想世界を追求しようとした。《タイム・マシン》(1895)は時間旅行によって未来を見てきた男の物語だが,労働から完全に解放されて平和を得た人々の不幸をえがいており,《解放された世界》(1914)では核兵器の危険とともに,その抑止力をも提示した。事実この作品は原爆の開発に関して精神的な支えとなったといわれており,一方では世界国家,社会主義,自然保護,福祉社会,科学による病気や天災の克服といった理想が,のちの時代の大きな指針となった。…
※「解放された世界」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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