世界大百科事典(旧版)内の調停前置主義の言及
【家事調停】より
…裁判官である家事審判官1名と,民間人から選出された家事調停委員2名以上からなる調停委員会が,非公開でこれにあたるのが原則であるが,家事審判官だけで行う場合もある。家事審判法は調停前置主義(民事訴訟を提起する前に調停手続を必要とする制度)の原則を規定しており,人事訴訟手続法に明文規定のある地方裁判所に訴訟を提起することができる事件(離婚,嫡出否認,認知など),および同法には規定はないが同じく人事に関する事件(親子関係存否確認,相続回復など),その他一般に家庭に関する事件は,訴訟の前に原則として家庭裁判所の調停を経由しなければならない。調停の申立ては書面もしくは口頭ででき,その費用は900円と若干の通信費にすぎない。…
【人事訴訟】より
…財産関係に関する訴訟では紛争はその訴訟当事者間のみで相対的解決が図られるにすぎず,それをもって足りるが,身分関係は社会生活の単位であるから対世的に確定する必要があるところからこの主義が採用されている。 日本では家庭に関する訴訟事件については調停前置主義がとられているから,訴えを提起しようとする者はまず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない(家事審判法18条)。調停手続において調停が成立すれば,訴えの提起は不要となる。…
【離婚】より
…ちなみにタイ,ミャンマー(ビルマ),ベトナムやスウェーデンなどにも協議離婚の制度はあるが,裁判所等の公機関による離婚意思の確認が行われることにおいて,日本とは相違している。 日本では第2次大戦後,家庭裁判所が創設され,協議が調わない離婚についての紛争は,まず,必ず家庭裁判所の調停にかけられ(調停前置主義),そこで〈調停離婚〉が成立しないか,審判で離婚を宣せられたもの(〈審判離婚〉)が確定しなかったかの場合のみ,訴訟として〈裁判離婚〉の審理に持ち込むという新しいシステムがとられた。審判離婚は,2週間以内に異議の申立てがあれば失効する点を除けば,簡易な形をとった一種の裁判離婚であるが,調停離婚は,両当事者の離婚合意を斡旋したものであるから,その本質は協議離婚の一種といえる。…
【労働裁判所】より
…ナポレオン1世治下の1809年につくられたこの制度は,労働関係から生ずる個別的紛争を労使代表を審判官とする二者構成の司法機関で処理しようとするものであり,その起源は古く中世の職業別紛争処理制度に発するとされる。調停部と判定部から成る労働審判所は厳格な調停前置主義を採っており,調停不調の場合に限って労使審判官の合議による判定が下される。その判定に対する控訴および上告はそれぞれ通常の裁判所である控訴院cour d’appel,破毀院cour de cassationになされる。…
※「調停前置主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」