遊の思想(読み)ゆうのしそう

世界大百科事典(旧版)内の遊の思想の言及

【道家】より

…その先駆は《論語》にいう逸民であるかもしれぬが,直接には戦国中~後期の(1)個人の生命の充実を重んじた楊朱,子華子,詹何(せんか),(2)寡欲に徹し闘争の否定を唱えた宋牼(そうけい),尹文(いんぶん),(3)道徳的先入観からの脱却を説いた田駢(でんへん),慎到,(4)総体としての世界の〈実〉に依拠して,あれとこれとの区別である〈名〉(概念,判断)を軽視した恵施(けいし)などであり,その成立と展開は《荘子》《老子》《淮南子》などによって最もよく知りうる。前3世紀初め,自我の撥無(はつむ)によって一の無たる世界に融即せよ,それこそが道をとらえた聖人の主体性だからとする万物斉同の哲学に始まり,そのように世界を統御しつつ同時にそこから超出して自由であれと説く遊(ゆう)の思想に受け継がれ,以後各方面に展開していった。例えば(1)不可知の実体,道の形而上学,混沌からの流出を説く宇宙生成説,陰陽(いんよう)・五行(ごぎよう)説を伴うの自然哲学,万物を調和ある有機体と見る万物一体説,輪廻・転生の思想,(2)価値判断と事実判断を撥無する知識論,矛盾律を認めない論理思想や弁証法,寓言・重言・巵言(しげん)の表現論,(3)自我の中から感覚・知覚の夾雑物を排除する虚静説,本来的生の実現を唱える全性保真説や養生(ようせい)説,濡弱謙下(じゆじやくけんげ)の処世術,悟性による堕落をつく文明批判と退歩史観,無為自然の支配を説く政治思想など。…

※「遊の思想」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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