遍歴民(読み)へんれきみん

世界大百科事典(旧版)内の遍歴民の言及

【中世社会】より

… こうした遍歴する非農業民は(つ),(とまり)などに本拠をおき,平民の共同体,荘園・公領の範囲をこえた〈無主〉の場,山野河海,河原,中州,(いち),宿(しゆく)などをその活動の場としていた。そうした〈無主〉の場,交通路に対する支配権は,鎌倉幕府成立までは究極的に天皇,幕府成立後は西国では天皇,東国では将軍が掌握しており,遍歴民は中世に入ると各地の渡し(わたし),津,泊などに立てられた関を自由に通行するための保証を天皇・将軍に求めたのである。それとともに,平民と区別された遍歴する職能民としてのみずからの立場を鮮明にするためにも,これらの人々は先のように天皇家,摂関家,仏神と結びつくことを必要とした。…

【漂泊民】より

… 日本の社会の場合,漂泊民と定住民との分化が多少とも現れてくるのは,農業の開始以後であるが,14世紀ごろまでは,その区別は必ずしも明確でなく,両者の関係は流動的であった。漁労民―海民,狩猟・採集民―山民,さらに芸能民,呪術者,宗教者,商工民等が,山野河海で活動し,道を通り,市で交易活動を展開する限りにおいて,彼らは漂泊民,遍歴民として姿を現すが,その根拠地においては若干の農業に携わる場合が多かった。釣糸を垂れ,網を引く海人(あま)や斧を持つ山人,遊行女婦(うかれめ)や乞食人,山林に入り,道路を遊行する(ひじり),さらに時代を下れば廻船人,塩売薬売から鋳物師(いもじ)にいたる商工民,馬借車借などの交通業者,遊女・傀儡(くぐつ)等の芸能民などは,みなそうした人々であり,11世紀に入れば,これらの人々を〈道々の輩〉(道々の者)として一括する見方も現れてくる。…

※「遍歴民」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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