世界大百科事典(旧版)内の電気生理の言及
【神経生理】より
…一般の認知科学が,脳機能を理解しようと試みているにもかかわらず,依然として脳をブラックボックスとして取り扱ったり,実際の脳とは無関係な認知システムやモデルを研究の対象にしているのに対して,神経生理学では,感覚,知覚,記憶,学習などを,脳の解剖学的な構造や生理学的な機能をもとに,単一神経細胞のレベルや神経細胞の集団からなる神経回路網のレベルで理解しようと試みている。特に,神経細胞の活動様態は電気的な現象としてとらえることができることから,このような電気現象を手がかりに,単一神経細胞における情報処理,神経細胞集団における情報処理のしくみをとおして脳の情報処理のしくみを明らかにしようとしており,ときには電気生理と呼ばれることもある。
[神経生理学の研究領域]
神経生理学は,20世紀初頭にイギリスの生理学者C.シェリントンに始まり,E.D.エードリアン,A.L.ホジキン,A.F.ハクスリー,B.カッツによる興奮性膜の性質に関する一連の研究を経て,ガラス微小電極を使用した細胞内記録法による単一神経細胞での情報処理機構の研究,金属微小電極を使用した細胞外記録法による感覚系や運動系の情報処理機構の研究,そして無麻酔動物の脳の単一神経活動の記録により学習や記憶のしくみを明らかにする研究などが広く行われている。…
※「電気生理」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」