世界大百科事典(旧版)内の霊肉二元論の言及
【体】より
…二元論のもとになったのはユダヤ教とキリスト教の考え方である。ユダヤ思想では霊(ルーアハrûaḥ)と肉(バーサールbāśār)をはっきり分けたが,この霊肉二元論がキリスト教に受けつがれ,さらに近代の物心二元論が発展してきた。古代ギリシアでは,心と身体・物体の分け方はもっと複雑である。…
【死】より
…なぜなら,キリスト教徒の信条では,死者は肉体をもったまま昇天すると考えられたからであり,新約聖書によると,ゴルゴタにある昇天後のキリストの墓はからになっていたと記されている。日本では古来,ギリシアの場合におけるように霊・肉二元論の考え方が主流を占めてきた。人の死後その遺体を,埋葬までの一定期間地上に放置するという殯(もがり)の風習が古くから行われたが,その背景には魂が遺体から分離し遊離するという観念が横たわっていた。…
【心理学】より
…
[心理学の歴史]
まず,ギリシアの昔から説き起こせば,すでに,肉体から独立してイデアの世界に存在する霊魂を考えたプラトン,肉体を素材(ヒュレ)とする形相(エイドス)としての霊魂,肉体を肉体たらしめ,活動させる原理としての霊魂を考えたアリストテレス,霊魂をも含めて万物は原子の運動に由来すると考えたデモクリトスやエピクロスらの説があった。プラトンの霊肉二元論は,中世のキリスト教思想を支配し,近世においては,物質の本質を延長とし,精神の本質を思惟としたデカルトの物心二元論に引き継がれた。さらに19世紀にはじまった近代および現代の心理学においては,精神を肉体から独立に存在するとは考えないけれども,精神をそれ自体として独自に研究しようとする人たちの理論に影を落としている。…
※「霊肉二元論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」