世界大百科事典(旧版)内のBeckmann,M.の言及
【新即物主義】より
…そこには戦後社会の混乱の中で見いだされた孤独な事物体験,人間疎外,生活態度などが反映している。ハルトラウプは新即物主義をグロッス,O.ディックス,ベックマンMax Beckmann(1884‐1950)らの時代批判的な左派または〈真実主義Verismus〉とシュリンプGeorg Schrimpf(1889‐1938),カーノルトAlexander Kanoldt(1881‐1939)らの右派または新古典主義とに分けている。人間をマネキン風あるいは獣的に描くグロッス,デフォルメされた戦争画や娼婦像で人間の醜悪を暴くディックス,からみあう群像やうつろな事物の静物画で世界に投げ込まれた人間の不安な実存と孤独を表現するベックマンなどの批判的ないし実存的リアリズムに対し,右派の風景や人物画には時代を超えた牧歌的雰囲気があり,むしろ新ロマン派と呼べるような審美性が漂っている。…
【表現主義】より
…芸術革命志向の前者と政治志向の後者とが対立し交流する中で,表現主義芸術運動には帝都ベルリンの状況を反映して世界の終末と戦う黙示録的な主題が顕著になり,それは11年にベルリンへ移住した〈ブリュッケ〉派のうちでもとくにキルヒナーの街娼群像連作や,12年のシュトゥルム画廊開きに招かれた〈ブラウエ・ライター〉派のうちではとくにマルクの《動物の運命》などに端的に示されている。マイトナーLudwig Meidner(1884‐1966)の〈革命〉に見られる大都市の混沌(こんとん)と革命幻想の描写は,グロッスの戦中の作《O.パニッツァの埋葬》やベックマンMax Beckmann(1884‐1950)の反戦的な作品《夜》につながっている。 このようにしてドイツ革命前後の表現主義美術は,ダダの過激な否定にもかかわらず,都市の崩壊や戦禍を描く黙示録的表現から,革命を射程におく時代批判的ないし風刺的な傾向へと変貌し,ディックスのようにグロテスクでリアルな作風を成立させた。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」