世界大百科事典(旧版)内のBogatyryov,P.G.の言及
【記号】より
…ロシア・フォルマリズムの延長線上にあるプラハ言語学派の活動は,フォルマリズムによる詩的言語(詩学)の研究を引き継ぐとともに,一般に発話の機能モデルの研究を推し進めたが,発話は現実における言語の使用であるから,当然,言語と現実のかかわりあいが問題になり,さらに進んで現実を言語として読み解く展望が開かれた。ボガトゥイリョフPyotr G.Bogatyryov(1893‐1971)の民族衣装の機能構造研究もその成果のひとつであった。これに対してソ連文化記号論は自然言語のうえに形づくられる第2次モデル形成体系(日常言語に対する芸術言語など)に焦点をあて,Yu.M.ロートマンの構造詩学研究,芸術テキストの構造の研究などで活動を軌道にのせ,文化テキストの研究へ見通しを開いた(モスクワ・タルトゥ学派)。…
【プラハ言語学派】より
…1920年代にチェコスロバキアのプラハで興った構造主義の古典学派の一つで,言語学を中心に文芸理論とフォークロア研究の領域で華々しい活躍をした。プラハ言語学サークル,プラーグ学派などとも呼ばれる。この学派の中心になったのはチェコ人のマテジウスVilém Mathesius(1882‐1945)とロシア人のR.ヤコブソンで,このほかにやや遅れてこの学派に加わったN.S.トルベツコイ,文芸理論で業績を残したムカジョフスキーJan Mukařovský(1891‐1975)や,フォークロア研究でのボガトゥイリョフPëtr Grigorievič Bogatyrëv(1893‐1971)らがいる。…
【変装】より
…よく知られるように,衣装は単にわれわれの身体を外的な自然の諸条件(暑さ寒さなど)から保護するだけではなく,その着用者の性別,年齢,婚姻の有無,身分,職業,宗教,民族等々を示す,社会的・文化的な記号としての役割をもっている。ロシア出身の民俗学者・記号論学者ボガトゥイリョフPyotr G.Bogatyryov(1893‐1971)が著した《モラビア・スロバキアにおける民俗衣装の諸機能(邦訳題《衣裳のフォークロア》)》(1937)は,このような側面からの衣装の構造的機能研究の先駆的な業績であるが,その中の一章〈未婚の母のかぶりもの〉は,衣装というものがもつシンボリックな機能,ひいてはそれが社会の中で形づくる〈制度的強制力〉を知る上で,示唆に富む事例となっている。モラビア・スロバキアのいくつかの地域では,性道徳を犯し〈未婚の母〉となった娘は,編んで垂らした髪を切られ,既婚女性と同じかぶりものをすることになるのであるが,そのような変更は,妊娠が知れるやいなや有無をいわさずに行われ,その〈堕落した娘〉は,共同社会の中で他の独身の娘とまちがいなく区別されることになるのである。…
【ロシア・フォルマリズム】より
…〈文学ではなくて,文学性,つまりある作品をして文学作品たらしめているもの〉こそ文学研究の対象とすべきであると主張した。おもなメンバーとしては,1915年に設立されたモスクワ言語学サークルのヤコブソン,ボガトゥイリョフP.G.Bogatyryov(1893‐1971),1916年に設立されたオポヤーズ(詩的言語研究会)のシクロフスキー,エイヘンバウム,トマシェフスキー,トゥイニャーノフらがあげられる。彼らは,それまでの文学研究が文化史や社会史,あるいは心理学や哲学に依拠していることを批判するとともに,文学作品を自立した言語世界としてとらえ,言語表現の方法と構造の面から文学作品を解明しようとした。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」