世界大百科事典(旧版)内のHanson,N.R.の言及
【科学史】より
… 科学史における新しい波は,1960年代に入って現れた。この段階は,科学の方法論についての科学哲学的吟味,たとえばK.R.ポッパーの《探究の論理》(1934)への疑念に端を発しており,そのきっかけはハンソンN.R.Hansonの《発見の諸型》(1958)によってつくられたといってよい。ハンソンは,科学を支える客観的データの神話を壊すとともに,これまで自明とされてきた他の知識体系に対して科学のもつ独自的特権性という考え方そのものにもくさびを打ち込んだ。…
【科学哲学】より
…すなわち,われわれにとって純粋で中立的な観察というものは元来ありえず,すべてはすでに現に存在している理論や解釈によって汚染されているのであり,したがって,科学革命というものも,新しい観察の出現によってなされるというよりは,むしろその時代の理論的パラダイムの転換によってなされると考えるべきであるということになる。この話題ではT.クーン,ハンソンR.Hanson,ファイヤアーベントなどの業績が大きい。(3)決定論と自由の問題も一つの重要テーマである。…
【発見】より
…何ごとか(事実にせよ,理論にせよ)を〈見いだす〉ということは,決して,単に〈見る〉ことではない。ハンソンN.R.Hanson(1924‐67)は《科学理論はいかにして生まれるかPatterns of Discovery》(1958)において,事実の〈理論負荷性theory‐ladeness〉を提案し,この点を強力に主張した。ある理論を前提にしてものを見るとき,初めて,ある事実が〈見える〉のであり,したがって,理論的前提が変化したとき(ハンソンはそれを心理学のゲシュタルト変換に模した),同じものを〈見て〉いても,〈見え方〉が変わって新しい事実が〈発見〉される,という側面が強調されたのである。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」