中日辞典 第3版の解説
[少知識]声调
❶ 声調と四声(しせい)
中国語の音節(原則として漢字1字は中国語では1音節で発音される)は高低昇降の音調をともなって発音される.これを声調(tone)という.
共通語には“阴平
”(第1声),“阳平 ”(第2声),“上声 ”(第3声),“去声 ”(第4声)の4種の声調があり,これを“四声 ”という.また,四声のほかに「軽声」と呼ばれる,短く軽く発音されるものがある.これは第1声から第4声までの変調(音変化)の一種と考える.ローマ字中国語(ピンイン)では,第1声—第4声をそれぞれ , , , のように主母音の上に印をつけて表す.この印を声調符号という.軽声は あるいは とする.次の図は第1声から第4声までの声調を図示したものである.
高中低とは話す人の相対的な声域,中は中くらいの高さ,高は高め,低は低めを表す.第1声は高く平らな調子.第3声はのどを押さえ込むように低い調子に下げ切り,最後にすっと声帯の緊張を解くと後尾が自然に上昇する.下げ切ったところで打ち切り,次の音に移る(図で点線部分のない)ものを半3声と言う.第2声は中くらいの高さから一気に引き上げる調子.第4声は反対に出だしの部分を高く緊張させて,すっと力を抜くと下降調子になる.
❷ 軽声
「軽声」は前の音節について軽く短く発音される.固有の声調パターンがあるわけではなく,前音節との連続による音の弱化現象で,音の高さも直前の声調によって決まる.
軽声か軽声でないかによって意味が変わる場合がある.たとえば,“妻子
”は「妻と子」だが,“妻子 ”は「妻」の意味になる.また,“精神 ”は「精神」で,“精神 ”は「元気な」の意味である.❸ 変調
連続して発音すると,本来の声調が変化することを“变调
”と呼び,共通語では以下の種類がみられる.ただし,表記上は原調のままであることも多い.①第3声+第3声(もと3声の軽声を含む)→第2声+第3声
例:广场
→(実際の発音) 哪里 →②第3声+その他の声調→半3声+その他の声調
例:老师
(212) → (21)声域をもっとも低い1からもっとも高い5で表す(左図参照)と,第3声は212,半3声は21で表される.
③“一
”は序数詞の場合以外,後に第1声・第2声・第3声が続くと第4声に変調し,後に第4声が続くと第2声に変調する.軽声が続く場合も,本来の声調に従い同様の変調を起こす.例:一天
→ 一起 → 一共 → 一个 →④“不
”は後に第4声が続くと第2声に変調する.例:不看
→なお,“七
”“八 ”も従来“一”と同様に変調させることが多かったが,現在では原調のまま発音するのが普通である.