改訂新版 世界大百科事典 「キチョウ」の意味・わかりやすい解説
キチョウ
grass yellow
Eurema hecabe
鱗翅目シロチョウ科の昆虫。やや南方系の種で,本州以南に多く,北海道では記録はあるがきわめてまれ。明るい丘陵地のほか,東京などの市街地でもよく目撃されるが,これは幼虫の食樹であるハギ,ネムなどが栽植されているためでもある。やや小型で,開張は4~4.5cm。雄の翅表面は鮮やかな黄色,雌は淡黄色であるが,裏面の模様や表面の黒色部は季節による変異が大きい。夏型はやや大きく,黒色部が発達しない。秋型の裏面は褐色の鱗粉が多く,そばかす状の斑点もある。秋型の成虫が越冬し,初冬でも暖かい日に活動するほか,早春にもよく目撃される。年2~4回の発生。近似種に,やや小型のツマグロキチョウE.laetaがある。幼虫が野草のカワラケツメイしか食べないため分布は局地的で,前種よりもさらに南方にかたよる。年2~3回の発生で秋型の成虫が越冬する。このほか,石垣島,西表島にはタイワンキチョウE.blandaが分布している。本種の雌は前2種と異なり,食草に多くの卵を一時に産む。幼虫は蛹化(ようか)に至るまで群生する。ほかに迷蝶としてホシボシキチョウE.brigittaが対馬や九州で記録されている。
執筆者:高倉 忠博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報