ギンザメ

改訂新版 世界大百科事典 「ギンザメ」の意味・わかりやすい解説

ギンザメ

全頭亜綱ギンザメ目ギンザメ科Chimaeridaeに属する海産魚の総称,またはそのうちの1種を指す。日本近海には8種のギンザメ科魚類がいるが,交尾器の形態,しりびれの有無,各ひれの形,色彩などが分類上のポイントとなる。名は体が銀白色を呈することに由来する。英名はその顔つきからrat fish,またはrabbit fishという。ギンザメ,ココノホシギンザメアカギンザメの3種がポピュラーであるが,なかでもギンザメChimaera phantasmaはもっともふつうに見られる種類で,北海道から東シナ海にかけて分布し,水深90mから540mくらいのやや深い大陸棚斜面の海底で生活する。体は長く側扁し,尾びれの先端糸状に長くのびるのが特徴である。背びれ前縁に強いとげがある。雄には腹びれの一部が変化して生じた交尾器のほかに,頭部には交尾の際に雌をとらえておくための鉤(かぎ)状の突起がある。歯は癒合して板状となり,底はえなわワイヤなどを切り取るほど強力である。全長1m余りに達する。卵生で,前後に1本ずつの突起がある長楕円形の卵殻を産み出す。雄は体長50cm,雌は65cmほどで性的成熟に達する。卵巣にある卵は直径40mmほどになると子宮内に排卵される。産卵期は東シナ海では10月から翌年の7月ごろと推定される。小型のカニ類をおもな餌とするが,エビ,魚類,ヒトデ,イカ海藻などが胃中から見つかることがある。底引網や底はえなわで漁獲され,下等な練製品原料となる。
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百科事典マイペディア 「ギンザメ」の意味・わかりやすい解説

ギンザメ

ギンザメ科の魚。全長1m余りに達する。北海道から東シナ海に分布。水深90〜540mくらいのやや深い海底にすむ。体は側扁し,尾びれの先端が糸状に長くのびる。背びれ前縁に強いとげをもつ。卵生。産卵期は東シナ海では10月〜7月と推測されるが,生態は不明なところが多い。下等な練製品の原料となるが,食用にはほとんど利用されない。ギンザメ科の魚は,エイサメと同じ軟骨魚類。すべて深海性で,日本に7種,世界に21種いる。近縁にテングギンザメ科がある。

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