ハスイモ(読み)はすいも

改訂新版 世界大百科事典 「ハスイモ」の意味・わかりやすい解説

ハスイモ (蓮芋)
Colocasia gigantea Hook.f.

サトイモ科の多年草。サトイモの近縁種で,分類上は別種であるが,栽培上はサトイモの同類として扱われる。葉も葉柄も緑白色で,白粉をおびる。株は開張性で大きく,高さ1~1.5mになるが,小さな子いもをストロンを伸ばしてつける。親いも,子いもとも小さくて固く食用にならない。木の下などやや日陰生育がよく,強光を嫌う。東南アジア(マレー半島,インドネシア西部地域)に野生種が分布するが,えぐみが強く食用にならない。まれに栽培系統があり,食用にされている。日本の栽培品種は葉柄にえぐみがなく,もっぱら葉柄(いもがら)を食用にする。刺身のつまや汁の実,三杯酢として夏の料理に適する。葉柄の皮をむき,水にさらして乾燥,調製してずいきをつくる。加藤清正が熊本城築城に際し,畳の芯に肥後ずいきを入れ,万一の籠城の際の兵糧としたことで有名だが,江戸時代の《本草図譜》や《本朝食鑑》の記載によれば,より古い時代からハスイモのずいきがつくられていた。《百姓伝記》にも〈はすいも〉の名がみえるが,今日,日本での栽培は少ない。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハスイモ」の意味・わかりやすい解説

ハスイモ
はすいも / 蓮芋
[学] Colocasia gigantea Hook.f.

サトイモ科(APG分類:サトイモ科)の多年草。シロイモともいう。葉柄を食用とするために栽培される。サトイモによく似るが別種で、塊茎は大きくならず、しかも堅いので食用とはしない。葉柄は緑白色で長さ1~2メートルになり、切り口には蓮根(れんこん)のように小さな穴があいている。えぐ味がほとんどなく、生食あるいは煮物として食べる。農業的にはサトイモの一品種として扱われ、暑さに強く、おもに西日本暖地において栽培される。

星川清親 2022年1月21日]


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世界大百科事典(旧版)内のハスイモの言及

【サトイモ(里芋)】より

…食用とするサトイモ科の多年草(イラスト)。インド東部からインドシナ半島部にかけての地域が原産地であり,古く稲作の渡来以前に日本でも栽培されていたと考える人もある。茎は地中にあってほとんど伸びず,肥大して塊茎(いも)(イラスト)となる。葉は長さ1~1.5mの葉柄(ずいき)を直立し,葉身は楯形,卵円あるいは心臓形で,長さ30~50cm,幅25~30cm。表面が滑らかで水をはじく。地上に抽出した長い花茎の先に肉穂花序をつけ,仏焰苞(ぶつえんほう)に覆われる。…

※「ハスイモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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