翻訳|meprobamate
中枢性筋弛緩薬のメフェネシンから誘導された抗不安薬である。白色の結晶性の粉末で味は苦い。トランキライザーの一種(弱トランキライザー)で,不安,緊張を軽減する。バルビツレートに比べて精神活動に対する抑制がはるかに小さい。視床下部,視床,大脳辺縁系に対し抑制的に作用すると考えられる。脊髄反射をも抑制し,中枢性筋弛緩作用を示すが,抗コリン作用も抗アドレナリン作用もない。消化管から容易に吸収される。不安,不眠,各種の神経症に1回0.2~0.4g(内服)用いる。長期投与では耐薬性が上昇し,薬物依存におちいり,投薬を中止すると退薬症状を呈することがある。かつては抗不安薬としてよく用いられたが,ベンゾジアゼピン系薬物(ニトラゼパム,ジアゼパムなど)のほうが優れているため,現在ではあまり用いられなくなっている。
→向精神薬
執筆者:福田 英臣
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
2-methyl-2-propyl-1,3-propanediyl dicarbamateの一般名.C9H18N2O4(218.25).プロピオンアルデヒドを原料に,2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールを合成し,これにホスゲンを作用させて炭酸エステルとし,さらにNH3を作用させると得られる.白色の結晶性粉末.熱水から再結晶する.融点104~106 ℃.無臭で,苦味がある.20 ℃ の水に0.34%(重量/重量)溶ける.エタノールに易溶.酸およびアルカリに安定である.向精神薬に用いられる.視床の介在ニューロン系の機能を抑制し,脊髄の多シナプス反射弓の介在ニューロンを遮断し,不安,緊張状態を緩和・消失させる.自律神経系にはほとんど作用しない.[CAS 57-53-4]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…52年には抗ヒスタミン薬と抗マラリア薬との交点にあったクロルプロマジンと,インドの民間療法から発見されたレセルピンとがつくられ,劇的な抗精神病作用をもつことがわかった。筋弛緩薬,メフェネシンの誘導体であるメプロバメートに抗不安作用が確かめられたのは55年であった。これら3種の薬の発見が引金となって,現在までに約200種の精神治療薬が市販されるにいたった。…
…しかし,まぎらわしいので現在では,前者を抗不安薬anti‐anxiety drug,後者を抗精神病薬anti‐psychotic drugとよぶようになった。バーガーF.M.Bergerが筋弛緩薬として合成したメプロバメートに抗不安作用が発見された(1955)のが最初の抗不安薬で,次いでベンゾダイアゼピン系のクロルジアゼポキサイド,ジアゼパム,オキサゼパムなどが合成され,心身症などに広く用いられている。これらは筋弛緩や眠気などを伴うので,服用後の自動車運転は危険である。…
※「メプロバメート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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