《魏志東夷伝》にみられる社会階層。3世紀中葉を中心とした時期に,高句麗,夫余,濊(わい),韓,倭など東夷全域に存在していた。本来下戸は中国で使用された概念であるが,《魏志東夷伝》のそれは固有の意味をもっている。すなわち,〈奴僕〉のごときものであり,軍糧を担って諸加(首長層)とともに戦場に赴き,大家(支配層)に〈米糧,魚塩〉を供給する義務を負う存在であった。彼らは邑(村)落共同体の一般成員であり,豪民や渠帥などの邑落首長に統率され,さらにその邑落は王族や諸加によって支配されていた。各種族によって不均等はあるが,総じていえば,下戸は邑落共同体を基礎として累層的に編成された政治社会の被支配者階級である。古代国家形成過程における階級支配の一端を示すものといえる。
執筆者:木村 誠
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「魏志」東夷伝にみえる被支配民。倭人条(「魏志倭人伝」)のほか,高句麗・夫余(ふよ)・濊(わい)・韓などの条にもみえ,各地の固有の名称というより中国人による一般庶民の呼称と考えられる。倭人条には「大人(たいじん)は皆四・五婦,下戸も或は二・三婦」とか,「下戸,大人と道路に相逢えば,逡巡して草に入り,辞を伝え事を説くには,或は蹲(うずくま)り,或は跪(ひざまず)き,両手は地に拠り,之が恭敬を為す」など大人と下戸の支配・服従関係が記される。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…上戸は酒を多く飲む人,下戸は酒が飲めぬ人をいう。いずれも平安時代には使われていた語で,上戸は《大鏡》,下戸は《色葉字類抄》に見られる。…
※「下戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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