ヒトの血液内にある有毒成分を急激に体外へ排除するために,その血液を抜き取り,新しいよい血液を輸血する治療法。最も有名なのは,Rh式やABO式血液型不適合妊娠によっておこる胎児・新生児溶血性疾患のときに行われるもので,これは出生後すぐに臍(さい)静脈(へその中にある静脈)を使って黄疸色素のビリルビンや血液型不適合妊娠のためにできた抗体を含んだ血液を除去するために行われる。この治療により,新生児の脳組織における黄疸,すなわち核黄疸の発生を防止し,脳性麻痺から守ることができる。この新生児への治療は1944年にウィーナーA.S.Wienerが初めて行ったものであるが,成人に対しては,やけどの治療のために,すでに1921年にロバートソンO.H.Robertsonが行っていた。今日では,新生児の血液不適合のほか,成人の劇症肝炎(急激に発症して重篤になる特殊な肝炎)や出血性疾患,毒物の中毒のときに行われている。全身の血液の90%近くまで交換するには,新生児では約600ml,成人では数lの血液が必要で,少しずつ,瀉血(しやけつ)(血液を抜いてすてること),輸血をくり返す。
執筆者:島田 信宏
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新生児の血液を瀉血(しゃけつ)しながら輸血して全血液を置換することで、母子の血液型不適合による新生児溶血性疾患の治療法として開発されたものである。核黄疸(おうだん)の発症と血清ビリルビン濃度との関係が明らかにされてからは、血液型不適合にかかわりなく血清総ビリルビン量が一定レベル(1デシリットルにつき20ミリグラム)以上の新生児に対して行われるようになった。最近は重症黄疸以外の疾患、感染症、薬物中毒などにも行われている。
新生児の全血液量の約2倍の新鮮ヘパリン血(ヘパリンで凝固を防いだ血液)またはクエン酸ナトリウムで凝固を防いだACD血を用いて血液を交換し、血中のビリルビンとともに抗体も除去する。2時間くらいかけて行ったほうが効果的である。1本の静脈を使って交互に瀉血と輸血を繰り返す方法と、動脈からの瀉血と静脈からの輸血を同時に持続的に行う方法があるが、一般には前者の場合が多い。理想的には2本の臍(さい)動脈からそれぞれ除去と注入を行って循環血液量が一定に保たれるようにしたほうがよい。重症の例では単に1回にとどまらず2、3回、ときには数回にわたって行われることがある。
[坂上正道]
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