人種差別をなくすため、日本を含む170カ国以上が結んでいる。あらゆる人種差別を撤廃する政策をとり、差別を禁止することを義務付けている。1965年に国連総会で採択され、69年に発効。日本は95年12月に批准した。しかし留保条件を付け、人種差別思想の流布や差別の扇動を罰する法律をつくる義務については、憲法の表現の自由との関係で履行しない余地を残した。
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正式名を,〈あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination〉という。1965年12月21日国連総会において賛成106,反対なし,棄権1で採択した。97年9月現在当事国148(イギリス・ドイツ・フランス等のEU諸国,旧ソ連・東欧諸国,アメリカ・カナダ・ブラジル等の北米・中南米諸国など世界の大多数の国が含まれる)。この条約が禁止する人種差別とは,人種,皮膚の色,門地または民族的・種族的出身にもとづくあらゆる区別,除外,制約,優先である。人種や皮膚の色のような人間の生物学的特徴による区別のほか,差別理由として門地を掲げることにより,また,この条約が新設した国際的監督機関である人種差別撤廃委員会の慣行からみて,狭義の人種差別のみならず,差別一般の撤廃のための基本文書となっている。他の人権条約と比べ驚くほどの短時日で起草・採択されたが,当事国も圧倒的に多い。国際社会をこれほどまでに結集させた背景には以下のような経過がある。
1959-60年にナチズムの象徴ハーケンクロイツ(鉤十字)を書きたてたり,反ユダヤ主義を煽(あお)るような事件が続発し,国連人権委員会の差別防止・少数者保護小委員会がこの問題をとりあげ60年1月に非難決議をし,さらに人権委員会も,経済社会理事会も同旨決議を採択,国連総会が何らかの措置をとるよう要請した。また同年3月,南アフリカのシャープビルという町でのアパルトヘイト政策に反対する平和的集会に対し同国政府が強権で臨み,流血の惨事(シャープビル事件)が発生したため,国連安全保障理事会は,南アフリカの事態が国際的摩擦に発展し,継続すれば国際の平和と安全を危うくすると決議した。さらに60年には18ヵ国が植民地から独立し,アフリカの16ヵ国がその秋一挙に国連に加入した。こうした新興独立国は,反植民地主義の旗を掲げ,人種差別に対しては鋭敏な感覚をもっている。こうしたなかで,国連総会は,60年12月,差別を断固非難し,必要なあらゆる措置を要請した。そして,まず63年に人種差別撤廃国連宣言が,続いて65年にこの条約が採択されたのである。
日本は,1995年12月1日に国会が締結を承認し,同月15日に加入書を国連事務総長に寄託し,条約当事国となった。日本につき,翌96年1月14日に効力を発生した。
執筆者:芹田 健太郎
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正式名称は「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」International Convention on the Elimination of All Forms of Racial Discrimination。1965年12月21日に国際連合総会において賛成106、反対なし、棄権1で採択され、1969年1月4日に発効した。締約国は2019年8月時点で181か国。日本は、1995年12月に加入の手続をとり、翌1996年1月14日に発効した。
この条約にいう「人種差別」とは、人種・皮膚の色・世系(せいけい)(descent。出生によって決定される社会的地位や身分)・民族的または種族的出身(origin)に基づく区別や除外や制約や優先であって、政治・経済・社会・文化その他の公的な生活の分野で、人権と基本的自由の、平等の立場での承認や享有や行使を無効にしたり害する目的や効果をもつものを意味する。この条約の履行を確保するため、締約国は種々の国内措置をとっており、また人種差別撤廃委員会という国際機関を設置した。この委員会は、締約国の報告を審議し、異議申立てを受理するほか、一定の条件で、個人や団体の申立ても受理し、審理することができる。
[芹田健太郎]
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人種,皮膚の色,民族的・種族的出自にもとづくあらゆる差別の撤廃および差別の扇動の禁止を目的とする人権条約。締約国が他の締約国の不履行を国際連合に通報することができる国家通報制度を備える。国連総会で1965年採択,69年発効。
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