デジタル大辞泉
「冷」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
つめた・い【冷】
〘形口〙 つめた・し 〘形ク〙
① 外気が肌にあたってひえる。寒い。ひんやりとする。《季・冬》
※落窪(10C後)一「女の衣(きぬ)も引き着せ給ふに、ひとへもなくて、いとつめたければ」
② 物の温度が低く、ふれるとひややかな感じである。あたたかみがつたわらない。
※枕(10C終)一四二「うちたる衣もつめたう」
③ 人情がうすい。温情がない。冷淡である。よそよそしい。
※
仮名草子・
仁勢物語(1639‐40頃)上「女限りなくつめたしと思へど、さる汚き踵
(きびす)などを見せては、いかがはせんとて」
④ 冷静である。
※鉛筆ぐらし(1951)〈
扇谷正造〉
新聞記者の唄「冷たく観察せよ、ということである」
[語誌]「冷たし」は「寒し」よりも新しい語であるが、中古においては、①のように「寒い」と意味領域を接触しながら、ほぼ同義の語として存在していた。
つめた‐げ
〘形動〙
つめた‐さ
〘名〙
ひ・える【冷】
〘自ア下一(ヤ下一)〙 ひ・ゆ 〘自ヤ下二〙
① 温度が下がってあたたかみがなくなる。冷たくなる。ひえびえとする。ひややかになる。《季・秋》
※大智度論天安二年点(858)八九「火をして滅し、湯をして冷(ヒエ)しむ」
※
蜻蛉(974頃)下「露ふかき袖にひえつつあかすかなたれながき夜のかたきなるらん」
② 熱中する気持、情熱がさめる。また、興奮がさめる。
※第三者(1903)〈
国木田独歩〉五「江間君も其うちには冷
(ヒ)えるから。冷
(ヒ)えればお鶴と同じ心持になって来るから」
③ 互いの結びつきなどが弱くなる。うまくいっていた関係がわるくなる。
※大阪の話(1934)〈
藤沢桓夫〉二「
養子との仲が冷えたのか、どうしたのか」
④ 能で、芸に淡々とした中に深い味わいがあり、冴えている。
※
申楽談儀(1430)序「
尺八の能に、尺八一手吹き鳴らいて、かくかくと謡ひ、様もなくさと入る、ひえにひえたり」
⑤ 零落する。
※玉塵抄(1563)五五「零落疲労してをちぶれひえた者のいた所か」
ひえ【冷】
※
雑兵物語(1683頃)上「小椒粒は〈略〉夏も冬も、朝一粒づつかじれば、ひへにも熱にもあてられない物だ程に」
② からだの、特に腰から下が冷える病気。ひえや
まい。
※再昌草‐享祿五年(1532)六月二四日「ほしいままにきこしめさるな夏の水つもれば冬のひえとなるもの」
③ (冷気のために起こると考えられたところからという。または、「ひえ(稗)②」からか)
(イ) 瘡(かさ)や疥癬(かいせん)などの皮膚病の称。
※
洒落本・志羅川夜船(1789)「下へゆくこじょくにむかい、これてめへのひへはなをったか」
さま・す【冷】
〘他サ五(四)〙
① 熱いものを冷たくする。ひやす。〔
色葉字類抄(1177‐81)〕
※俳諧・八番日記‐文政二年(1819)六月「青田みてさまさせて又入湯哉」
② たかまった
雰囲気(ふんいき)や気持、興味などを鎮める。
※源氏(1001‐14頃)柏木「なにばかりの事にてか、思ひ、さますべからんと空を仰ぎてながめ給」
③ 冷淡にあしらう。つれなくする。
※洒落本・
傾城買四十八手(1790)やすひ手「あんまりさましなんすなおめへにほれてゐんすとさ」
④ 済ます。のがれる。
※浄瑠璃・百日曾我(1700頃)一「此ばをさまし
かさねて曾我が
ゆかりとて、
ひとりの手がらにせんたくみ」
ひや【冷】
[1] 〘語素〙 名詞に付いて、
冷たい、温めてない、または冷やした状態であることを表わす。「ひや汗」「ひや酒」「ひや水」「ひや飯
(めし)」など。
[2] 〘名〙
① 冷たい状態をいう。
※雑俳・削かけ(1713)「あつい事じゃ・かかちとひやをむめてたも」
※
毛利家文書‐(年月日未詳)(室町後)毛利元就自筆書状「ひやしるわんに一つ二つほどならではのみ候はぬやうに」
ひや・す【冷】
〘他サ五(四)〙
① ひえるようにする。つめたくする。
※宇津保(970‐999頃)祭の使「御馬ども池にひきたててひやし」
② 心胆を寒からしめる。ぞっとさせる。
※浮世草子・
武道伝来記(1687)七「膽
(きも)をひやして目を駭
(をどろ)かす」
③ 冷静にする。気持を落ち着かせる。
④ 刀で人を斬る。また、白刃をあてる。
※虎明本狂言・祐善(室町末‐近世初)「とがもなき人にむかひてさはらばひやせとあっこうすれは」
ひや・ける【冷】
〘自カ下一〙 ひや・く 〘自カ下二〙
① 冷たくなる。十分に冷える。冷却する。
※和英語林集成(再版)(1872)「イドニ ツケタ スイクヮワ ヨク hiyakeru(ヒヤケル)」
② 十分に水につかる。ふやける。
③ ひやかしが終わる。
※滑稽本・和合人(1823‐44)二「ふらふらとひやかしに行って、九ツ(ひけ)を打ってもうすっぱりひやけたから」
ひやし【冷】
〘名〙 (動詞「ひやす(冷)」の連用形の名詞化)
① ひやすこと。また、ひやしたもの。〔名語記(1275)〕
② 冷水をいう。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ ひやかすこと。からかうこと。また、その言い手。ひやかし客。
※評判記・難波物語(1655)「かかる調法なる事を人にさするは、惜しきとの心にて、御ひやしあるかと悪推せられ候」
れい【冷】
〘名〙
① (形動) つめたいこと。ひややかなこと。また、そのさま。
※史記抄(1477)一四「遅は寒也冷也」 〔隋煬帝‐悲秋詩〕
※雑俳・柳多留‐一一三(1831)「相馬の官女まくり手で冷九献」
つめた【冷】
[1] (形容詞「つめたい」の語幹) つめたいさま。感動表現に用いる。
※人情本・春色梅児誉美(1832‐33)三「ヲヲつめた。水だよ」
※虎寛本狂言・比丘貞(室町末‐近世初)「鎌倉の女郎は、すす竹のつめたに織り物の手おほほひ」
さめ【冷】
〘名〙 (動詞「さめる(冷)」の連用形の名詞化) 熱気がうすれること。冷えること。
※浮世草子・傾城歌三味線(1732)二「薬罐の熱湯(にえゆ)は一花ばかりで醒(サメ)が早いもの」
つべた・い【冷】
※落語・鰍沢雪の酒宴(1889)〈四代目三遊亭円生〉「マアサ寒冷(ツベタ)いやネ」
ひや・い【冷】
〘形口〙 ひや・し 〘形ク〙 冷たい。寒い。ひやっこい。
※羅葡日辞書(1595)「Algidus〈略〉Fiyaqi(ヒヤキ) モノ、ツメタキ モノ」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報