改訂新版 世界大百科事典 「効用関数」の意味・わかりやすい解説
効用関数 (こうようかんすう)
utility function
物,エネルギー,情報,サービスなどの効用を数値におきかえる関数をいう。幾つかの対象について,その価値,良さ,重要さ,好みなどを比較している状況を考える。対象xが対象yと同等以上と考えるとき,xをyより選好するといい,xyと表す。可能なすべての二つの対象の組について選好を定めたものを選好関係という。
任意の三つの対象x,y,zについて,xyかつyzならば,xzであるとき,その選好関係は推移律を満たすという。推移律をみたす選好関係については,対象のそれぞれに数値を対応させる関数u( ・ )を,任意のx,yについてxyのときかつそのときに限ってu(x)≧u(y)となるように定めることができる。この関数u( ・ )を順序(保存の)効用関数という。順序効用関数によって,任意の二つの対象のどちらが選好されるかが,数値の大小比較で表されることとなる。
対象xと対象yのどちらを選好するかだけではなく,どちらをどれだけ選好するかを問題としよう。xをyよりαだけ選好することをxαyと表す。可能なすべての二つの対象の組について,どちらをどれだけ選好するかを定めたものを基数選好関係という。基数選好関係がフォン・ノイマン,O.モルゲンシュテルンの与えた3条件をみたすときには,任意の三つの対象x,y,zについて,xαyかつyβzならば,xγz(γ=α+β)となる。このとき,対象のそれぞれに数値を対応させる関数u( ・ )を,任意のx,yについて,xαyのときかつそのときに限ってu(x)=u(y)+αとなるように定めることができる。この関数u( ・ )を基数効用関数という。
効用関数は人間のもつ対象の間の選好を数値的に取り扱うことを可能とするものであって,経済学,心理学をはじめ人間の感覚を計測する分野において基本的な概念を構成している。
執筆者:市川 惇信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報