失権約款(読み)しっけんやっかん

精選版 日本国語大辞典 「失権約款」の意味・読み・例文・類語

しっけん‐やっかん ‥ヤククヮン【失権約款】

〘名〙 ある契約について債務不履行があった場合、債権者意思表示がなくても、債務者一定権利を失うことを定めた約款

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デジタル大辞泉 「失権約款」の意味・読み・例文・類語

しっけん‐やっかん〔‐ヤククワン〕【失権約款】

債務不履行がある場合、債権者意思表示なしに当然に債務者が一定の権利を失う旨を定める約款。例えば、割賦払い約款付き売買契約で、買い主が1回でも代金支払いを遅滞すれば契約は効力を失うとするなど。

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改訂新版 世界大百科事典 「失権約款」の意味・わかりやすい解説

失権約款 (しっけんやっかん)

たとえば,月賦販売契約において買主が1回でも月賦金の支払を怠ったときは売買は効力を失い目的物を返還するという特約や,賃貸借契約において1回の賃料延滞があれば契約は当然解除されるという特約などのように,一定の事実が発生すれば当然権利は失われ契約は解除されたものとみなす契約条項(当然解除条項)を失権約款という。この場合には,解除のための履行催告(民法541条)および解除の意思表示の必要はなく,その条件とされた事実の発生により当然に契約の効力が失われる(解除条件つき契約。127条2項)ため,権利を失う者にとっては不利な条項といえる。そこで,従来,著しく不利なときには,失権約款を公序良俗違反として無効(90条)だとしたり,賃貸借の場合には〈信頼関係の破壊〉の不存在や信義則違反などを理由にその効力を否定し,それほどでないときでも,このような契約条項をなるべく失権約款と解釈しないで,催告は要しないが解除の意思表示だけは必要だとする無催告解除特約と解釈して,債務者の救済を図ることが主張されてきている(また,割賦販売業者の場合,契約を解除するには20日以上の相当な期間を定めて書面で催告しなければならない--割賦販売法5条。なお,ドイツ民法360条は,債務者の債務不履行を条件とした無催告解除特約を失権約款とみていることに注意)。
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百科事典マイペディア 「失権約款」の意味・わかりやすい解説

失権約款【しっけんやっかん】

債務者の債務不履行の場合に,債権者の特別の意思表示なしに,当然に債務者が契約上の一切の権利または特定の物に対する権利を失うことを契約に付随して定める約款。割賦販売において買主に債務の履行遅滞があった場合になされることが多い。債務不履行を条件とする行為であるが,債務者を不当に不利に陥れるときは公序良俗に反することになる。割賦販売法(1961年)は債務不履行の場合の契約解除について20日以上の期間を定めて催告することを要求しているので,その範囲で失権約款は排斥される。

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