好きこそ物の上手なれ(読み)スキコソモノノジョウズナレ

デジタル大辞泉 「好きこそ物の上手なれ」の意味・読み・例文・類語

きこそもの上手じょうずなれ

好きな事にはおのずと熱中できるから、上達が早いものだ。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ことわざを知る辞典 「好きこそ物の上手なれ」の解説

好きこそ物の上手なれ

何事も、好きであってこそ上手になる。いまは未熟であっても、本当に好きならば上達する望みがある。

[使用例] 器用さとけいことすきと三つのうちすきこそものの上手なりけれ、と口ずさみせられけるが、将碁の宗匠そうけいもこの狂歌を折りふししられけるとぞ[俳諧・其角十七回|1723]

[使用例] 私は、生まれつきか、鋸やのみなどをもって木片を切ったり、削ったりすることが好きで、よく一日そんなことに気を取られて、近所の子供たちと悪戯いたずらをして遊ぶことも忘れているというような風であった〈略〉好きこそ物の上手で、俺に似て器用でもあるから、ゆくゆくは相当の棟梁にもなれようというような考えで、いよいよ両親は私を大工にすることにした[高村光雲*光雲懐古談|1929]

[解説] 文字どおりには、好きであればこそその道の上手である、とする一種の誇張表現で、まず好きであることが将来の上手につながることが強調されています。技能は未熟でも、好きなことにかけてはひけをとらない初心の者を励ましてくれることわざといえるでしょう。文法的には、強意の係助詞「こそ」を受け、「なり」の已然形「なれ」で結んでいます。古典文法でおなじみの「係り結び」が、現代に生きて使われている珍しい例といえます。
 用例の「其角十七回」は、江戸前期の俳人たからかく十七回忌に編まれた句集で、注釈なかで、かつて故人が「器用さと稽古と好きと三つのうち好きこそものの上手なりけれ」とよく口ずさみ、将棋名人大橋宗桂も同じものを口にしていたことを伝えています。ことわざの背後には、芸能などの弟子を育てる名人上手の深い洞察力と温かい思いやりが感じられます。

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