ワイルドキャット・ストライキwildcat strikeの訳語。労働組合員の一部が,組合の中央執行機関の承認を得ず,もしくは組合全体の意思を無視して行うストライキをいう。これに対し,組合の支部や分会などの下部組織が,上部組織の承認なしに,あるいはその指示に反して行うストライキは,〈非公認スト〉と呼ばれる。これらの争議行為は,いずれも組合内部の統制違反問題を生ずるが,使用者との関係では,非公認ストの場合は,下部組織全体の意思に基づいて行われる争議行為であるから,争議行為自体の法的正当性が失われないのに対し,一部の組合員が行う山猫ストは,場合によっては法的にも正規の争議行為としての刑事上,民事上の免責を受けないことがある。山猫ストや非公認ストは,労働組合の官僚制的運営が進行し,組合が下部組合員の要求や苦情処理などについての不満を有効に吸収,解決できなくなる場合に発生するのが通例であり,第2次大戦以降の資本主義世界ではあまねくみられる現象となっている。もっとも,日本では,職場闘争華やかなりし1950年代の一時期にみられて以降ほとんど発生していない。これは,労働組合が積極的に組合員の要求を組織してきたためというよりは,企業サイドからの労務管理がことのほか成功を収め,下部組合員の苦情が巧みに処理されてきたためといってよい。
執筆者:上井 喜彦
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労働組合の一部の構成員が、組合での意思統一を経ず、あるいは組合全体の意思とは関係なく行うストライキ。このストは、組合規約所定の手続に違反して行われるから、スト参加者は、規約違反あるいは規律違反として組合内部で制裁を科せられることもある。しかし、対使用者との関係において不当か否かは見解が分かれており、その最終判断は、スト自体が労働者の利益に合致するか否かにかかっている。日本ではこのストは少ないが、イギリスでは多発している。イギリスの山猫ストは、強力な中央組織の承認を経ずに職場単位で発生している。しかしフランスでは、ストライキは労働者個人の自発行為とされており、山猫スト自体が存在しえない。
[村下 博]
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…また,時間を限定するか否かで時限スト,無期限ストに分かれ,時限ストを断続的に行う場合は波状ストという。その他,歴史上社会の耳目を集めたものには山猫スト,ハンガー・ストライキ(通称ハンスト),納金ストがある。山猫ストとは,一部の組合員・労働者が組合や争議団の内部規律を無視して行うストライキをいい,労働組合の官僚機構化が進んだ第1次大戦以降の現代に特徴的な現象である。…
…したがって,使用者との関係上,組合規約違反の争議行為も正当性を失うことがない。
[特殊な類型の争議行為の正当性]
山猫スト,順法闘争,一斉休暇闘争などの特殊な類型の争議行為があるので,この争議行為の正当性についてふれておく。 山猫ストは,組合の正規の手続を踏まないで一部組合員集団または労働組合の下部組織が行う争議行為である。…
※「山猫スト」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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